PBLにおけるチームビルディングのためのカードゲーム制作


Keywords:チームビルディング, 協働, ゲーム, コミュニケーション

1.はじめに

私たちは一人で生きているのではなく、家庭、学校、職場といった集団を作り社会を形成し、その中で生活している。[1] 特に仕事の場では、一人で全てをこなすということは稀で、チームを組み、協力して取り組むのが一般的である。そういった背景から、幾つかの大学ではPBL(プロジェクト学習)を取り入れることで、チーム活動の重要性を説いている。チームを組むメリットは、単純に人数が増えたことによる作業量の増加だけではなく、自分以外の他者の視点を取りいれることでより新しいアイデアを創出すること、助け合うことで相互に新しい学びを得る機会となることが挙げられる。これらのメリットはメンバーの協働意欲と、コミュニケーションしやすい環境を整えるためのチームビルディングがあってこそ成立する。しかし、大学生達が自分と違う価値観を持つ人とチーム内でコミュニケーションを取り活動していく上で、チームビルディングの重要さを理解する機会は少ない。
そこで、チーム結成時点においてチームに対する考え方の共有及び、チームで動くことへの意味、個人の心構えを準備するための場とツールが必要とされている。

2.研究の目的

本研究では、プロジェクトの初期段階でチームビルディングに利用することを想定した対話型カードゲームの開発を行う。チームにおける自分自身の役割など、目指すべきチーム像を描き出していくことを目的とする。

3.先行事例との関連

協力型ボードゲーム「花火」[2]はチームでの勝利を目指すゲームである。自身の役割を思考し、チームの勝利のために奉仕することが自然と行えるゲームになっている。しかし、ゲームの時間が1時間近くかかる長いゲームとなっている。長い時間のかかるゲームは集中力が続かない。特に初対面の場合は動きが取りづらく、悩むことに多くの時間が割かれてしまう。そのためチーム活動をしていくための導入としてはベストとは言えない。チームビルディングでは、ゲーム内で関係の改善を行うのではなく、良い関係を作っていくための環境を作ることを目的としているため、できるだけ短時間で完了することが求められる。また、やりこむことによって新たな効果をが生むことも重要であるまれる利用法も入れる。

4.調査と考察

4.1.前期

PBL履修済みの4年生から、チーム活動内で起こる問題点を収集した。収集した情報を元にチーム活動で起こる問題解決を考察するためのプロトタイプを製作した。しかし、PBL履修済みの4年生に試行してみた所、チーム活動を行っていない段階で考えるのではなく、チーム活動を終えた振り返りとして効果的に活用できる可能性が見えた。この結果からチーム結成時のチームビルディングに求められることは、現実的なチーム活動の問題を思考させるよりも、チーム活動の雰囲気を体験させることであると考えた。

4.2.後期

お互いの状況を考察し、それに対して行動を起こせるような簡単なコミュニケーションゲームをいくつか試行した。ゲームの観察のその結果を元に、チームにとってポジティブな行動を他人に起こさせることが、チーム活動の雰囲気を体験させる上で良い影響があり、どのような行動がチーム活動で必要とされているかを考える良い機会を作ることができるのではないか、と考えた。

5.成果物

5.1.成果物構想

チーム活動を行う前に、チームで活動するための協働意欲と、コミュニケーションしやすい環境を整えるための協力型カードゲームの制作製作を行った。カードゲームを媒体に、対話を生み出す仕組みをゲームのシステムに落とし込むことによって、協働や合意形成に対してポジティブに取り組む姿勢を促す。結成当初のチームを対象とし、チーム活動の進め方に対して、各々が求めるチーム像を持ち、共有することによってチーム全体としての行動指針を明確にさせる。

5.2.成果物概要

協力型コミュニケーションゲーム「ナイスチームワーク!」はチームでの勝利を目指すゲームである。標準的な遊戯人数は4人であるを推奨している。このゲームには、「チームワークカード」と「個性カード」の2種類のカードが存在している。チームワークカードは自分以外に、個性カードは自分だけが見えるように持つ。それぞれが2種類のカードを1枚ずつ持った状態でゲームがを始められるる。チームワークカードは自分以外に、そして個性カードは自分だけが見えるような持ち方で持つ。
5分間の話し合いの中で、全員が、自分の持つチームワークカードの内容を行動することによってゲームクリアとなる。その中で個性カードに書かれた内容を破らないようにすることも必要とされる。チームワークカードの内容を行動すると1人につき2点加点され、個性カードは加算の材料にはならないが、個性カードの内容を破った場合1点減点される。例をあげると、4人チームワークカードの内容を行動できた状態で1人が個性カードの内容を破っているとチームの点数は7点となる。
そうして点数計算を終えた後は、それぞれのカードを開示して、5分間の振り返りの時間をとる。ここまでをゲームの内容とする。

5.3.効果

このゲームでは3つの利点がある。
・1つ目はそれぞれの持つ情報の違いから状況を推理し、チームで勝利することについて考えることができること。
・2つ目に他の人にどの様にコミュニケーションを取れば必要な情報を引き出せるかを考える機会となること。
・最後にチームワークカードに記されている、お礼を言う、褒めるなどのチームの雰囲気をよくするために必要な、ポジティブな要素を入れることによって、チームを良い雰囲気にするために必要なことを実際に感じることができること。
これらの効果によって、この先に待つチーム活動の中でどのような雰囲気で活動したいかを考え、理想を持つだけでなく、どのように自分が働きかければ、チームとしての理想に近付けるかを考えるきっかけになる。

6.プロトタイプを用いた評価

学生に対して、制作したゲームを試行した。試行中には、他人に望んだ行動を起こさせるためにはどのようなアプローチを取れば良いか悩み、どのような行動を求められているかを考える姿が多く見受けられた。「個性カード」による自身の行動の制限と、「チームワークカード」による自身に求められる行動との矛盾ができる可能性があることで、チームに貢献するには自身はどのような行動を取れば良いかを考える機会となっていた。
ゲーム後の振り返りの時間では、ゲーム中に考えて行動したという実績があることから、求めた答えを引き出そうと試行錯誤したことなど、お互いの行動の意図を積極的に語り合う場ができていた。振り返りによって各々の考えを知り、より良い答えを話し合うことで、今後のチーム活動において、チームに求めることと、どうしたらその行動をしてもらえるかを考えるきっかけとなっていた。

7.終わりに

前期は、PBL履修済みの4年生からチーム活動内で起こる問題点を収集し、それを元にしたキットのプロトタイプを製作、協力型ゲームを行うことによってどのような効果が期待できるかを調査した。
後期は、協力型ゲームへの調査を続け、チーム活動へのイメージを持たせるための仕組みを考察し、自分の理想のチームにするためにはどのように働きかければ良いかを考える機会を得るための協力型ゲームを作成した。
今回の成果物では、会話によって相手の考えと行動を考察することに焦点を当てたが、体を動かすといった他のアプローチを取り入れることも考えられる。

参考文献

[1] 社会的行動とは?
http://www.nips.ac.jp/srpbs/youkoso/mission/board-d_01.html
[2]ボードゲーム「花火」アントワーヌ・ボザ作.