VIVIWARE Cellを用いた高校生向け統合型教材の開発

Keywords:VIVIWARE Cell,高校生,情報デザイン,プログラミング,情報設計,教材

[NE19-1130A/CDプログラム]

1.はじめに

高校で取り扱う情報の内容が大幅に改訂され,「情報に関する科学的な見方・考え方」[1]が求められるようになった.情報を学ぶ目的は,コンピュータ,問題解決,デザイン,プログラミング,データ分析といった幅広い内容を1年間で学び,その知識を応用して今後の生活に役立てていくことである.しかし,現状では内容が多岐にわたり,教科書を読むだけでは学習した知識を実際に何かのツールや仕組みに落とし込むのは難しい.また,複数の情報Ⅰの教科書にも実習編といったコンテンツが含まれているが,授業時間を考慮するとそれを学習することは不可能である.高校生が知識と実践を実世界のなかで関連づけながら学ぶ授業を展開することが求められている.また,本来的に情報分野においては,なにか一連の手続きを自動化するシステムを組み立てること自体も実はデザインである.したがって工夫次第でプログラミングとデザインを切り離さずに学習することも可能なはずである.

2.研究の目的

本研究は,まず,1)高等学校の情報の授業において,情報デザインとプログラミングを一体として学ぶことができる統合型教材を開発する.2)次にその教材を用いた授業計画の中で,高校生がアイデアを生み出しやすくするための仕組みを考案する.3)東京都立若葉総合高校とVIVIWARE 社の協力を得て実際の授業で運用し検証する.これらを通して高等学校の情報の授業運営へ分化しがちな領域をつなぐデザインの視点を提供することを目的とする.

3.先行事例との関連

現在,若葉総合高校の情報科を担当している山本教諭が都立神代高校にいた際に報告した年間授業計画がある.PrograteでJava Scriptを学習し,夏休みの課題ではScratchでゲーム制作,3学期には青山学院大学と協力をしてmicro:bitを使い自由作品を制作する,といったものであった[2].今回は,2学期中に山本教諭とmicro:bitの代わりに,より手軽にVIVIWARE Cellを使用して2コマ授業×6週間の授業を展開する.先行事例では自由作品を制作していたが,今回の研究では高校生たちが学校内の問題点を見つけ出し,それを解決するための作品をビジュアルプログラミングで制作する.このような授業を展開することで体系的にデザイン思考を学習することができ,プログラミングすることもデザインの一部であるということを理解してもらう.

4.研究方法

4.1.研究対象と目的

研究対象は東京都立若葉総合高校で展開されているアルゴリズムとプログラミング①,②の授業を履修している2年生と3年生の計41名である.授業は令和4年10月31日から12月14日に行われ,第1回から第6回まで両クラス合わせて12回の授業を行う.成果物を作るためのアイデア発想を手助けするためにオンラインホワイトボードのFigJamと自作したワークシート,レポートを使用する.今回の授業テーマは「ビジュアルプログラミングで学校内に楽しさを創造しよう!」である.このテーマの目的は,普段過ごしている教室空間にもたくさんの気づかない問題があふれており,それらは自分の力で解決できることを経験してみることである.

4.2.使用教材

第1回,第2回の授業では図1のようなFigJamを用いて登校から下校までの「1日のタイムライン」を付箋に書き出してもらうワークを行う.このワークを行う目的は学校内の問題点を探し出すために,普段どのように学校生活を過ごしているのかということを振り返ってもらうためである.2回目の授業から図2の自作したワークシートを使用する.このワークシートはFigJamで書き出した付箋の内容を参考にして作品のアイデアを考えるように設定している.例えば問1の「もし〜だったら良いのにな」,という項目では,「もし,教室でトイレの混雑状況が分かったら良いのにな」というように学校内の身近な困りごとや問題に自ら気づいて書き出せるように設問した.問2では,問1で考えた内容をもとにVIVIWARE Cellを使って解決,実現できる可能性が高いものを2つ選び,いつ,誰が,どこで,なにをどうする,どんなことが起きて笑顔になるのか,といったようにアイデアを分解して内容を分かりやすく書き換えるようになっている.第5回,第6回の授業では図3のようなレポートを使用する.このレポートを使用することで作品の説明と振り返りができるようになっており,また作品の発表原稿となるように項目を定めている.

図 1 FigJamワーク

図 2・3 自作したワークシートとレポート

5.研究結果

5.1.生徒作品より

生徒作品の「先生の機嫌を数値化せよ!」では,朝のSHRを受けた生徒が先生の機嫌度数をRotator[3]で入力し,その合計から数値の平均を算出する.平均が+50以上だと先生の機嫌が良いと判断される作品だ.他生徒作品の「シエスタください」では,教室内の生徒が眠気度数をRotator[3]で入力し,一定数を超えるとアラームが鳴り響く.アラームは生徒の任意で止まるので先生は眠る許可を与えなければならなくなる,といった作品である.身近で小さな問題に着目して個性的で面白いアイデアを考えられていた生徒が多く見受けられた.

5.2.自作教材使用結果

FigJamのワークでは,自身の学校生活を振り返ることができアイデアの要素を探し出すことができた.ワークシートの問1において,FigJamを参考にして5つアイデアを書き出すように指示をしたが埋めるスピードには個人差が見られた.特に「眠い」というワードから,生徒たちは眠らないようにするためのアイデアや睡眠時間を与えてもらえるようなアイデアを考えていた.しかし,これらのアイデアから生徒たちはワークシートの問1で考えた発想を展開してみたり他のアイデアと組み合わせたりして斬新で個性溢れる作品を目指していた.レポートに関しては自分の言葉で問題点や作品の説明を書くことができていた.問いを埋めることで発想のプロセスを振り返ることができ,そこからまた改善点や展望を述べている生徒が多く見られた.感想では,「アイデアを実現するのは難しかったが達成感を味わえた」と書いてくれた生徒がいた.授業を通して,問題を見つけアイデアから作品を作る楽しさや難しさを感じてくれたことが分かった.

5.3.アンケート結果

授業後,アンケート調査を行った.問1のFigJamワークはアイデアを考えていくための要素として役に立った,と思ってくれた生徒が多かった.しかし,数名の生徒が「どちらとも言えない」と回答した.このことから,振り返りからアイデアが出やすくなるというわけではない,ということが分かった.

問2のワークシートに関する質問では,ほぼ全員が作品を考える手助けになった,と答えてくれた.問3のレポートに関する質問でもほぼ全員が役に立った,と回答してくれた.これらの結果から,今回自作した教材はアイデア発想の手助けに寄与することができたと言えるだろう.

図 4 アンケート結果

7.おわりに

今回の研究では,アイデア発想を手助けするための教材を制作した.生徒が書いて埋めてくれたワークシートやアンケート結果から,自作した教材を十分に活用することができた,と考えられる.3種類の教材を使用したが,ここからまだ改良することは可能である.今後の高校情報科目でこの研究が参考なることを期待している.

参考文献

[1] 文部科学省高等学校学習指導要領 情報科関係資料「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」

https://www.mext.go.jp/content/20220324-mxt_kouhou02-000021499_1.pdf(参照2022/07/15)

[2] “プログラミングを(ぎちぎちに)詰め込んでみた年間授業計画と半期実施報告”.キミのミライ発見.

https://www.wakuwaku-catch.net/jirei1874/(参照2022/07/15)

[3] (ハードウェア)Rotator – VIVIWARE Cell (参照2023/01/13)

(ハードウェア)Rotator

(参照2023/01/13)