身体のバーチャル化を活用したオンライン発想法の研究

Keywords:発想法,バーチャルリアリティ,オンライン会議

相良 亮

[NE29-0062B/CDプログラム]

1.はじめに

インターネット環境の高速化やビデオ通話アプリの普及,バーチャルリアリティ技術の発達により,オンライン上でのコミュニケーションは,著しい発展を迎えている.また,昨今の新型コロナウィルスの感染拡大防止に伴い,オンライン授業と呼ばれる形態の授業や,仕事,娯楽においても,様々なコミュニケーションがオンライン上で完結する様になった.しかし,これらは現実の代替手段として消極的に利用されることが多く,オンラインだからこそ可能になった点が積極的に検討されているとは言い難い.例えば,Webカメラや音声を変換することで,これまでの自分自身の姿から離れた別のキャラクターにもなれる.これらを展開することで,オンライン上での楽しみ方やアイディア会議における新しい発想法を生み出すことができると考えられる.

2.研究の目的

本研究では,Webカメラや音声変換を活用した,オンライン会議やアイディア出しで活用することができる発想法について検討を行い,発想支援を行うためのツールを作る.普段とは違う自分になりきることで,それまでの制約や前提から離れ,自由な発想を促す仕組みを提示することが目的である.

3.先行事例との関連

1)シックスハット法[1]

オンライン発想法に関して考える際,先行事例として強制発想法と呼ばれる,アイディアの発想法を参考にした.
シックスハット法とは,6つの視点(客観的・直感的・肯定的・否定的・革新的・俯瞰的)の帽子のいずれかを一つかぶった状態でテーマについて考える発想法だ.この様に,強制的に違う視点を強いることで,自由な発想が生まれやすくなるという原理を用いた発想法である.ここから発想を得てユーザーの視点を強制的に切り替えることで,新しいアイディアの発想につなげることができるのではないかと考えた.

2)バーチャルユーチューバー[2]

近年Webカメラと顔認識を活用した新たなブームとなっているバーチャルユーチューバーと呼ばれる動画クリエイター達がいる.彼らは,顔認識ソフトで自身の顔をアニメキャラクターや動物に加工し,実際には顔出しを行わずとも,まるでその加工された顔が実在する本人であるかの様に振舞いながら,ゲーム実況やトーク動画などをアップロードしている.この様な特徴から,動画制作のみならず,他分野でもWebカメラと顔認識を活用することで,新たな自分になりきることが可能なのではないかと考えた.

4.調査と考察

はじめに、発想支援を行うツール作りについて検討するために,大学生3名に協力をしてもらい「名前」が個人の思考に与えるイメージについて焦点を絞り,昔話「桃太郎」を題材にプロトタイプの制作を行なった.プロトタイプの内容は,登場人物の「名前」を変化させたとき,物語が読者に与える印象を調査し,その後に「桃太郎」のストーリーを創作してもらい,どの様にストーリーに変化が生じるかを調べたものである.その結果,「名前」が変化することで,印象は変化させられる,とわかった.

図1  桃太郎を題材としたプロトタイプ

そこから,さらに近年流行しているバーチャルユーチューバーから着想を得た,身体のバーチャル化をテーマとするWebカメラを使った強制発想法の実験を大学生4人に協力をしてもらい行なった.
内容としては,キャラクターの「名前,出身地,性別,設定」などを自分自身で行い,ビデオ通話で自身が他の人物や動物になりきることができる,「SnapCamera」というソフトウェアを使って行うアイディアの発想法と,ディスカッションの手法を提案した.結果としては,自身の身体をバーチャル化して行うディスカッションは,普段とは違う思考を行うことができ,自由な思考やアイディアを強制的に発想させるという側面では,有意義なものであると確証を得た.

図 2 自身の身体をバーチャル化して行うディスカッション

5.先行事例との関連

以上の調査と考察を踏まえたうえで,新たなオンライン発想支援ツールの「CAMeleon」の開発を行った.
「CAMeleon」とは、「webカメラ」と自信を様々な姿に擬態することができる爬虫類である「カメレオン」を組み合わせた造語である。「CAMeleon」で使用するツールは,Webカメラと前述した「SnapCamera」,オンライン上で活用できるホワイトボード「Miro」を使う。「Miro」上に用意したマニュアルとワークシートに指定された通りに、設定や操作を行っていきキャラクター,動物になりながら,アイディア出しや問題について議論を行う.
「CAMeleon」は指定した動物やキャラクターになりきりながら,アイディア出しを行うことで、参加者が持っていなかった新しい視点を得ることができ,なりきった生き物や動物の視点で物事を考え,アイディアを発想することができる成果物となった.

図 3 CAMeleonワークシート
ワークシートは,初めに議題を決めるところから始め,次にその議題がどのようなものなのかを参加者が理解するための説明を行う.参加者全員が,議題について理解したら,参加者が成りきるキャラクターや動物を決め,そのキャラクターになりきりながら自己紹介を行う.ここから先は全て,決めたキャラクターになりきりながら議論を進めていく.
次に,「問題点はどこか?」のフェーズでは,キャラクターの視点でどのような議題に問題点があるのか各自で記入し,お互いに発表,意見を交換し合う.発表がすんだら,「解決策を探る」を同様の手順で行い,最後の「解決策をまとめる」で今回の議論を通して考えたことを各自でまとめ発表するというものである.
「CAMeleon」で最も重要なのは、キャラクターや動物になりきるということであり、なりきり度を上げるためには、自身の口調を動物に寄せることや、お互いのビデオ通話画面を見ながら議論を行うことがとても重要である。

6.今後の展望

今後の展望としては,様々な場で「CAMeleon」を利用してもらい,フィードバックを集め,ワークシートの項目の検討を行っていくこと.より使いやすいデザインと、「CAMeleon」をより円滑に利用することができるマニュアルの作成を行っていくことが重要だと感じる。また、「CAMeleon」がどのような議題に向いているのかを精査していく必要性があると考える.

7.まとめ

前期活動では,強制発想法や,名前や設定がもつ印象がどの様にユーザーに調査を与えるかの調査を行い、実験を行った.後期では,前期で得た調査結果を元に,「なりきる」という行為に着目,それまでの制約や前提から離れ,自由な発想を促す仕組みである「CAMeleon」というオンライン上で強い効果を発揮することのできるアイディア発想法の提案と,ワークシート作成,マニュアルの作成を行った.

 

参考文献

[1] 6つのアイデア発想法|明日からアイデアマンとして大活躍!
https://career-theory.net/ideas-thinking-4434
[2]バーチャルYouTuber | weblio辞書
(https://www.weblio.jp/content/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%ABYouTuber