捨てられるレシートに別の価値を創出するデザインの研究

Keywords:レシート,情報デザイン,ブランディング

1.はじめに

私たちが普段何気なく受け取っている「レシート」には、購入商品の詳細から購入店舗のキャンペーン情報など様々な情報が記されているが、ほとんどの人にとってただ購入を証明するだけの役割に留まっており、確認の役割を終えた時点で捨てられてしまう。

しかし、見方を変えれば、店舗から消費者へ伝えるべき情報を、小さな紙片の中にわかりやすく整理し表示するコミュニケーションのデザインが必要とされる一例であると言える。

一方、近年自治体などによるブランディングが進み、魅力的なコンテンツやプロダクトが多数デザインされ人々の心に残っている。しかし、どのお土産や、プロダクトにも洗練されたデザインが施されることが多くなり、「らしさ」の表現が難しくなっている傾向がある。

2.研究の目的

本研究では、捨てられてしまうレシートを新しいブランディングの手法として活用することで、レシートに別の価値を創出するデザインを考える。いくつかの自治体を例にとり、リデザインしたレシートや事例をまとめたガイドブックを作成することで、自治体がブランディングに活用できるようなアウトプットを目指す。

3.専攻事例との関連

レシートの情報に着目した先行事例としてレシート換金サービス「ONE」が挙げられる。スマートフォンのカメラ機能でレシートを撮影すれば、アプリ内のウォレットに10円が振り込まれるというものである。捨ててしまうレシートの情報に金銭的な価格をつけることで、交換可能な価値に変えている。ただ、一時的であるが故に捨てないような工夫は見られない。本研究では、情報に値段をつけることで短期的な価値を生み出すのではなく、当事者自身がレシートを元に自分の行動を省察できるしくみを設計し、自分なりの意味を見出す体験を生むことでレシートを捨てにくくなることを目指す。

また、レシートを効果的に活用している事例として、韓国のカフェ「mrd」も挙げられる。チェックシートのようなレシートに鉛筆で注文したいメニューの箇所をチェックし、クルーに渡す。そして商品とともにそのチェックシートが返され、購入証明の代わりとなる。SNSなどで「mrd」の写真を見てみるとほとんどのカスタマーがそのチェックシートと商品を一緒に収めた写真を投稿していた。購入証明の書類が副次的効果としてフォトジェニックな一面を持ったのは主に二つの理由があると考えられる。

1点目は、スッキリと整理されたデザインが施されており、商品を引き立てるに役割を果たしている点である。

2点目は、自分の筆跡とレシートのフォーマットが一体化し、その紙に一点物のような愛着をもたらしている点である。本研究では、この二点に着目することで、当事者の価値創出を促すデザインを行う。

▲cafe mrdのレシートとSNSでの活用

4.研究内容

4.1.成果物の構想

コンビニエンスストアや、スーパーマーケットなどの身近な店のポスターやチラシ、観光地のお土産の包装、地方の街の雰囲気などをリサーチし、「らしさ」の観点から分析します。そこから、特徴を分類することで自治体独自の表現方法について考え、レシートをリデザインしていく。

その際に、レシート本来の情報を伝えるという役割を損なわないようなデザインを施します。最終的には、ブランディングの一環としてのレシートの活用方法をまとめたガイドラインを作成し、提案する。

4.2.調査と分析

今回は、浦安市郷土博物館を対象にレシートのリデザインを行った。なぜ同博物館を選んだのかというと、研究者である私の地元であること、そして、浦安においてテーマパーク以外の魅力を伝える施設唯一の施設であると考えたからだ。

浦安の昭和の街並みを原寸大で再現したパビリオンや、埋め立て前の浦安の様子、海苔取り舟である「べか舟」の乗船体験、浦安の伝統を伝える「もやいの会」の方々とのお話しなど、様々な魅力的なコンテンツが同博物館には用意されている。

元々漁業が盛んな下町であった浦安は、現在でも市内にその名残が残っている。浦安市の指定文化財が28あり、そのうち千葉県指定文化財は5つある。また、川沿いには釣り船の業者によるアイキャッチとして、様々な種類の魚の名前が書かれた旗が並んでいる。

▲博物館の展示や市内の魅力的なスポット

4.3.成果物

博物館を訪れた人が、そこの物販でグッズを購入し、発行されたレシートに価値を見い出してもらうためのデザインの研究を行う。

浦安市内には魅力的なスポットが点在しているが、郷土博物館からの導線が弱いことに着目し、そこを改善できるようなレシートのデザインを軸に、博物館のコンテンツを振り返りできるようなレシートもデザインした。

▲実際にデザインしたレシート

5.考察と展望

5.1.考察

決められたフォーマットの中で様々な表現ができた。新しい手法を活用したブランディングのしかたを提案することで、レシートに別の価値を創出できたと考えられる。ただ、自治体が実際に活用するにあたっての分析はできなかったので、実現可能性については未知数と言える。

5.2.展望

展望としては、様々な自治体を対象にレシートを軸としたブランディングを提案する。事例をまとめ最終的にガイドラインとしてアウトプットするため、様々なタイプの自治体を調査する必要がある。また、実際に活用するにあたって対応可能なレシート機器や表現手法なども分析しなければならない。

6.おわりに

本研究を通じて、見方や発想の変換が価値創出において重要になると考えた。卒業後も引き続き研究を続け、ガイドラインを作成したい。

参考文献

[1] モバイルマーケティング研究所
https://moduleapps.com/mobile-marketing/20150325_receipt-report/
[2] レシートから考えるPOSデータ分析(2)
https://www.gixo.jp/blog/12343/
[3] レシート買取 one
https://www.businessinsider.jp/post-175983
[4] 浦安市公式サイト 歴史・文化財・史跡一覧http://www.city.urayasu.lg.jp/shisei/profile/rekishi/index.html