Keywords: 映像表現,グラフィック
1.はじめに
私たちは作り手や素材、歴史、流行、SNSに映えるといった感情的価値やストーリー性を持ったコンテンツに惹かれる。物事を選択する上で体験よりもその評判の方に重点を置く場合もある。たくさんのコンテンツが生み出され消費されていく時代。言語を用いたコミュニケーションや評価に重きを置き、今この瞬間の体験に意識を向け、評価をせずにただ観ることが難しくなっているのではないだろうか。
2.研究の目的
今この瞬間の体験に意識を向け、評価せずにただ観ることの楽しさを共有したいと考えた。味覚や文字、話すといった言語を使ったコミュニケーションでないと伝わらない「食べ物」をテーマに食べる・話す以外の表現でワクワクをシェアする。成果物は動的なグラフッィックスの方法を用いる。題材は、日本文化を色濃く反映している「鮨」を選択する。理由として、言語バリアを超えて広く知られる日本発の伝統的な文化であること。本来は味覚で感じ、言語で伝え合う食体験を、どこまで視覚を用いて表現できるかを探求するに値するテーマであると考えた。
3.先行事例との関連
未来の食事を変える「ProjectNourished」プロジェクトではVRを用いた新しい食事体験を取り入れることで、ダイエットや食物アレルギーによる厳しい食事制限からの解放を目的とした映像体験を提供している。においを再現するアロマディフューザー、噛んだ時の音を鼓膜に伝える装置と食べている時の動きをVR内に反映するセンサー付きのVRグラス、3Dプリントでつくられた味や食感を再現するもので食事体験を演出する。これらを元に、人の知覚を利用して食を感じることができる魅力的な映像の研究を進めていく。
4.調査
ビジュアルコミュニケーションでは画像的な視覚情報を主な手段とするが文字情報に比べて、より直感的で伝達が早いというメリットがある。評価をせずにただ観ることの楽しさを共有するには映像の利用が有効であると言える。また食べ物をモチーフにしたコンテンツを制作する際、実物を使用する表現が一般的である。しかし映像でしかできない表現方法への挑戦と言語を超えたコンテンツの提案には音楽と合わせたリズミカルな映像が有効であると考えた。また、モーショングラフィックスの表現方法を「映像を連続するグラフィックス」と定義することでどこを切り取っても絵になる映像を目指す。
5.成果物
5.1.共通コンセプト
「今この瞬間の体験に意識を向け、評価せずにただ観ることの楽しさを共有する」ことをテーマに音楽とグラフィックを合わせたリズミカルな映像を制作した。また、日本の伝統や文化を知らない海外の方もターゲットに含め、動画への興味で日本の知識を深めてもらう。内容は鮨ができて私たちの口に運ばれるまでの流れを説明している。
5.2.日本の伝統的なパターン
図1 青海波文様
海外の方に日本の伝統を感じてもらう映像にするため、日本で古くから使われている伝統的なパターンを積極的に取り入れた。
5.3.モーショングラフィックス
図2 タイトルのモーショングラフィックス
図3 鮨ネタのモーショングラフィックス
タイトルや魚が鮨になるまでの過程をリズミカルな音楽に合わせて動的なグラフィックで表現した。(図2.3)
図4 実物を使用した映像にトラッキングさせたモーショングラフィックス
5.4.タイポグラフィ
図5 いなりずしのタイポグラフィ
映像上での読みやすさを重視し華美になりすぎず視認性を重視して制作した。図5の他に鮨の種類を説明するために「にぎりずし」「ちらしずし」「まきずし」の3種類を制作した。
5.4.3Dアニメーション
図6 Cinema4D上で作成した魚もアニメーション
表現の幅や映像的な見やすさ、作品としての一貫性を考え3Dモデルを使用した映像を制作した。魚が鮨のネタになるまでの説明として、3Dモデルにアニメーションを付け、可動する魚のモーションを多く取り入れた。
6.今後の課題
今回、「今この瞬間の体験に意識を向け、評価せずにただ観ることの楽しさを共有する」ことを主題に、海外の方もターゲットに入れて鮨をテーマに扱った。実際に日本語の話すことのできない海外の方に映像を見てもらった所、鮨への興味以外にリズミカルな音楽と多彩なグラフィックで映像作品としての評価を得ることができた。
この研究では、ただ観ることの楽しさを共有するという点でより多くの人に成果物を見てもらいコミュニケーションを発生させる必要があると感じた。YouTube(https://youtu.be/rjgcFa2sbA8)にて限定公開しているが今後公開範囲を広げていきたい。
また、公開するSNSや動画サイト等の種類の研究も必要だと感じた。
7.おわりに
今回の研究では映像で表現することを成果物としたが他の表現方法も模索していきたいと感じた。
参考文献
[1] 専修大学出版企画委員会(編) 2006 『知のツールボックス』 専修大学出版局






