グループワークの議論におけるアイデアの可視化を支援するツールの開発

グループワークの議論におけるアイデアの可視化を支援するツールの開発
Keywords:グループワーク, 可視化, グラフィックファシリテーション

1.概要

 グループワークの議論等で、グラフィクスを活用する手法が注目されている。これらの表現技法の習得をサポートするツールとして制作を行った作品が、「Diagram Vocabulary Catalog」である。Diagram Vocabulary Catalogは、様々な図形を収録したiPad向けwebアプリだ。図形を提示し、空間的な因果関係の表現をするためのヒントを与えることで、表現するためのスキルを経験的に身につけることが狙いである。

2.背景と目的

背景と目的

 最近、グラフィックファシリテーションやグラフィックレコーディング等のグラフィクスを活用する手法が着目されている。このような、目に見えないものを形にして表現することは、グループワークの議論における相互理解の促進や、広範囲の共有の向上などの効果が見込める。また、これらの手法を行うためには「空間的な因果関係」と「具体的なビジュアル」の2つの表現スキルが求められると考えられる。具体的なビジュアルの表現を習得するための支援として、既に多くのイラストレーターによるイラスト習得本が存在している。そのため、今回は「空間的な因果関係」を表現するスキルを習得するための支援に目標を絞り検討を始めた。

3.調査と分析

 具体的ななターゲットを設定するため、専修大学ネットワーク情報学部3年生9名による1時間半のグループワーク活動の動画撮影・観察を行った。

グループワークの様子1
グループワークの様子2
問題点

観察の結果、実質議論に参加していない人がいることや、過去に決まったことがうまく共有されていない等の問題点が浮かび上がった。発言中心の議論において、理解のすれ違いが発生していると言える。
以上のことから、「理解のすれ違いが発生してしまう議論」に参加している学生をメインターゲットに想定し、制作を行った。

4.成果物概要

Diagram Vocabulary Catalog – 言葉から図解のイメージを探れるwebアプリ –
Diagram Vocabulary Catalog

Diagram Vocabulary Catalogは、様々な図形を収録したカタログである。図形を提示し、空間的な因果 関係の表現をするためのヒントを与えることで、表現するためのスキルを経験的に身につけることを狙いとして制作した。

図形は、基本的に6つのカテゴリに分類して調査している。
6つのカテゴリ分類

調査した図形は適度にデフォルメ化させ、描写し直したものを約100枚収録している。これらの図形に対し、想定しうる使用用途から検索ワードを設定した。例えば、「フローチャート」と検索すると、フローチャートに使えそうな図形が検索され、一覧で表示される。なお、平仮名・片仮名・漢字による検索に対応している。

5.評価と考察

 専修大学ネットワーク情報学部2年生62名に対し、アンケートによる調査を実施。(有効回答:57名)被験者には、サービスの仕組みを表現してもらい、カタログの有無での体感難易度を5段階で評価してもらった。なお、カタログはA3用紙に一覧で印刷したものを配布した。アンケート結果は、カタログが「ヒントになった」と回答した人と「ヒントにならなかった」と回答した人で分けて集計を行った。

アンケート調査

 アンケートの結果、「カタログがヒントになった」を選択した人が全体の約8割、さらにそのうち8割が「カタログがある方が簡単に表現できた」と評価した。この結果から、様々な図や形の表現を提示することは、空間的な因果関係を表現する際に有用であると考えられる。しかし、「カタログがヒントになった」と回答したものの、「カタログがない方が簡単に表現できた」と回答した人が2名に及んだ。自由回答欄により、カタログの図形を見ることで「当てはめなければならない」と感じてしまうことが理由に挙げられたことから、この成果物は繰り返し使用することによる経験的なリテラシーが必要であると考えられる。