LINEスタンプにおける感情表現の分析と次世代コミュニケーションツールの検討

LINEスタンプにおける感情表現の分析と次世代コミュニケーションツールの検討
Keywords:感情表現, LINEスタンプ, 次世代コミュニケーション, ハイコンテクスト

1.概要

本研究では、現在の日本の若年層でもっとも利用されているコミュニケーションツールであるLINEで交わされるスタンプを題材として、1)現時点での利用実態の調査、2)新規スタンプの制作と評価を元にした感情表現の分析を行う。分析から得られた知見を元に検討を行い、より親しまれる次世代のコミュニケーションツールを提案することを目的とする。

2.現代コミュニケーションの傾向

コミュニケーション過多の現代、スマホやPCの普及で人はコミュニケーションをTwitter、Facebook、LINEといったSNSを用いて行なっている。これらSNSの中で、日本人のシェアが一際高くなっているのがLINEである。他のSNSと違う、LINEが人気である一つの要素として、スタンプが挙げられる。これは、単純表現や曖昧な表現でも、共通の感覚や価値などから意思伝達が行われるハイコンテクストをうまく取り入れている。相手に直接的でない、解釈の自由な表現を行うことで、「ゆるい」対話を保てることから、文章構成におけるストレスを軽減している。また、感情や心境の抽象的な表現は、その解釈の多様性から現れる情趣を楽しむ文化を形成しており、言語情報だけでなく、感情の伝達が重要になったことを示唆している。こうしたコミュニケーションの形態からは、意思伝達を楽にしたいという反面、淡白な表現だけでは満足できないということが推察できる。

LINEスタンプの実態調査

3.LINEクリエイターズスタンプの実態

作為的に誇張された表現に加え、気持ちをうまく代弁できるものが重要になってきているが、多様な表現でそれをカバーしているものに、LINEクリエイターズスタンプがある。しかしながら、利用者の色々な好みを包括している中で、どういった傾向のものが好まれるかは明示されていない。感情の伝達が重要とされている中で、その利用者のニーズを把握することは必要であると考える。そこでLINEスタンプを通じて感情分解を行うことで、有効的な表現を明示し、使いやすい、好ましいスタンプを作るための支援を行う。また、こうしたコミュニケーションツールの移り変わりと共に、人は新しい可能性を求めつづけていることから、現在好まれている傾向を元に、次世代で親しみやすいコミュニケーションツールの形態を考える。

クリエイターズスタンプの現状

4.先行事例

感情の表現方法を探す手段について、現在「Stampers」や「スタレコ」といった制作したスタンプがLINEでリリースされていなくとも、掲載し紹介できるサイトができている。これらは多数のスタンプがある中で、探しやすいようにカテゴリー分けされている。しかし、そのカテゴリーはゆるい、かわいいといった絵柄の表現による分け方であり、使う用途によっては分けられていない。また、LINEスタンプが登場する以前にも、顔文字、アスキーアート、絵文字などは、言語情報だけでは上手く感情表現が出来ないという問題の要請として出てきたツールである。こうした、コミュニケーションにおける感情表現の先行研究は、これまでにも数多く行われている。加藤ら(2008)は、携帯メールのコミュニケーションにおいて、親しい間柄であるほど、顔文字(感情表現)が豊富になり、コミュニケーションを円滑にする役割を果たすことを明らかにした[2]。携帯メール時代の感情表現の方法の一つとして顔文字の存在は大きかったが、現在の主流であるLINEスタンプに焦点を当て、その感情表現の傾向をまとめたものはない。LINEスタンプは、顔文字よりも如実に感情表現をすることができ、微妙なニュアンスの違いを伝えることが可能になっている。これにより、好まれる・親しみやすいコミュニケーションの形がより細かく洞察できると考える。

親しみやすいコミュニケーションの形

5.LINEスタンプ利用履歴の分析

日常でどのようなコミュニケーション(感情表現)が頻繁に利用されるのか、約20名のLINEスタンプの利用履歴調査を実施し、表1にまとめた。表1の結果から、「OK・了解系」、「いじける・泣く・絶望系」、「影がある系」、「ビックリ系」、「感謝・喜び系」、「怒り系」のものが多く見受けられた。また、スタンプの表現方法からは、「無表情でも、所作があれば感情は伝わる」、「質疑応答の直接性を重要視しない」、「複数の意味に捉えられるものが好まれる」ということがわかった。今回の調査から、喜怒哀楽と言える主軸となる感情に則したものであるほど、使われやすいという結果がでた。また、会話をつなぐものとしてよりは、主に応答するためのシンプルな意思表示として使われている傾向が見られた。

スタンプ利用履歴の分析1
スタンプ利用履歴の分析2

6.スタンプの需要と供給の差

表2ではクリエイターが作ったスタンプはどのような感情表現が多いのか、上位人気スタンプ9種類のカテゴリー分けを行ない表1の感情表現の使用頻度との比較を行なった。図1から、ユーザーに使われやすい1位の「了解・OK」に対し、クリエイター側は6位。2位の「喜び・楽しい」に対しては21位と、両者の需要と供給の間に差がある。このことから、現状のクリエイターが作るスタンプの傾向とユーザーのニーズは必ずしも一致しておらず、表1のように、ユーザーに使われやすい感情表現がわかれば、クリエイターの参考になることがわかった。

スタンプの需要と供給

7.成果物

表1の感情表現の使用頻度を指標とし、イメージがわきやすいよう制作してきたスタンプの中から合うものを添えた。スタンプをリリースし、一般ユーザーへの使いやすさ調査とスタンプを作りたい人に、指標をヒントとしてスタンプを制作してもらう。

成果物1

制作スタンプ一覧

  • eggおじさん
  • あいた口がふさがらない
  • 塩顔うさぎ

成果物2
成果物3

8.評価と考察

制作したスタンプにおいては、審査から3ヶ月たつもリリースされず、使いやすさの統計的なデータはとれなかった。また、知人にスタンプを作る暇のある人がおらず、指標をみながらの制作において作りやすさを検証することはできなかった。しかし、実際に3種類のスタンプを制作したところ、40個ものレパートリーを考えるのは困難であったことから、スタンプをつくるための指標があることで、制作の手助けにつながると考えられる。一般公開のために、スタンプの使いやすさ、指標を見ての作りやすさの調査を引き続き行う。本研究から、スタンプの感情分解により得られた知見として、表現が過大になる、微妙な気持ちを表せる、演出的・創作的になるといったことが、コミュニケーションの傾向として現れている。このことから、次世代のコミュニケーションツールとしては、自分を違うキャラクターに見立て、表情を変えながらコメントできるものを検討した。

次世代コミュニケーションツールの検討

参考文献
[1]「『SNS疲れ』に繋がるネガティブ経験の実態」,加藤千枝(2013), 社会情報学2巻1号,p31-43, 2013 社会情報学会
[2]「携帯メールコミュニケーションにおける顔文字の機能に関する分析 : 相手との親しさの程度による影響の検討」,加藤尚吾,加藤由樹,島峯ゆり 他(2008),日本教育情報学会学会誌 24(2),7-55,日本教育情報学会