
Keywords:記憶, 情報, 観察
1.概要
スマホやパソコンの普及によりインターネットの情報量は爆発的に増加している。テレビやラジオなど情報を一方的に受け取る立場から自ら情報を選択し、受け取る形に変化している。多くの情報を受け取っているように見えるが、限られた情報のみ受け取っている。このことからモノを表面的に見る機会が増加していると考えられる。多方面から情報を受けることの重要性を説くため、他方向から情報を受けることで認識が変化するツールの作成を目的とする。
2.背景

情報量は人間が処理できる情報量は変わっていないのに、世の中に出回っている情報は410倍になっているというデータがあり、生み出される情報の量と消費される情報のアンバランス現象が起きている。そのため、限られたものから情報を受け取りがちになり、多角的視野を持ち物事を深く見なくなってきている。
3.調査と分析
日常生活において、特に意識せずに見ているものを対象者自身の身体とした。そこで、身体と記憶の結びつきを調査するため、16歳から69歳の男女23名にインタビュー法による質的調査法を実施した。
・若年層は理想と、年配層は過去の自分と比較が多く見られた。
→年配になるにつれて記憶の積み重ねが増え主体的な話が多く
出てくる。
・年配層で手の話題が多くあがった。
→手は年を重ねるにつれて、より記憶が蓄積されている。
手を題材とし認識に変化を与えるツールの作成を行う。
調査の結果から、特に手が記憶との結びつきが強いことがわかった。手を題材とし、制作を行った。
4.成果物
成果物「Te-gami」

手から見る情報階層

情報の階層を4つの階層に分けた。成果物は察する・観察する部分を体験できるツールである。
第一階層を表面的にとらえたもの。第二階(緑)を見たものから視覚的にわかる情報とする。第三階層(オレンジ)を視覚的に得た情報から連想し、詳細な情報だと認識する。第四層は第一階層から第三階層までを視覚的情報とした時、それ以外の情報(におい・感触・音・温度など)を元に詳細から連想、認識した情報である。

手の写真が写ったものを10枚テーブルに配置する。成果物の表には手の写真、裏側にはその人の全体写真と、その人物の手に対してのエピソードを記載。
写真は性別・年齢・体格・国籍などが異なるものを選択し、実寸大で印刷したものである。体験者自身が自身の手とTe-gamiを比べることで視覚的に入ってくる情報から連想し、その手の人物を想像してもらう。そして、裏側を見てもらいイメージと実際の人物との違いを体験してもらう。また、誰かと話しながら一つのものを見て、認識が異なることを体験してもらうことを想定する。
配置としては一番初めに中性的な手の形のものを置いた。裏返すと外国人の人物が写っている。そのことで他の成果物の中にも外国人の手が入っているのではないかと思わせることで認識の違いを体験してさせる。
高齢者や外国人など、体験者が普段あまり関わりない人たちであろう手と、体験者と近しいものとでの認識率の違いを感じ、経験や記憶をもとに脳で情報が作られていることを体験してもらう。
5.分析
体験者が手を見て得た情報(外部情報)を分解し組み立て、認識を行うときに外部情報にない情報を付け加える様子が見られた。記憶(内部情報)により新たに情報を付け加え組み立てを行っており、実際と異なる認識を行っていた。実際の外部情報の一部分を得てから再び手を見返したときに記憶により付け加えられていた情報と異なる情報を新たに付け加えていた。認識に及ぼす影響は外部情報以上に内部情報が強く影響しているのではないかと考えらえる。

アンケートの結果、「カタログがヒントになった」を選択した人が全体の約8割、さらにそのうち8割が「カタログがある方が簡単に表現できた」と評価した。この結果から、様々な図や形の表現を提示することは、空間的な因果関係を表現する際に有用であると考えられる。しかし、「カタログがヒントになった」と回答したものの、「カタログがない方が簡単に表現できた」と回答した人が2名に及んだ。自由回答欄により、カタログの図形を見ることで「当てはめなければならない」と感じてしまうことが理由に挙げられたことから、この成果物は繰り返し使用することによる経験的なリテラシーが必要であると考えられる。