Keywords: 家族間コミュニケーション、協働体験、メディア

[NE30-0071G/MCプログラム]
1.はじめに
ここ2年程のコロナ禍において、家にいる時間が増えたことは地球上の人間全てに共通するだろう。筆者は、家にいる時間が増えたことによって家族のありがたみを強く感じたとともに、家族間コミュニケーションの大切さ、また、それをいかに今までしてこなかったかを再認識することとなった。現代では家族間S N Sも普及し、必要なことはデジタルの伝達で済むことになった。しかし、生活の中で1番身近な存在である家族とは逆に距離を取ることが多く、お互いのことを知らないでいることは意外と多いのではないのだろうか。身近で遠い存在だからこそ、改めてコミュニケーションをとる機会をつくり、今まで気付かなかった新しい発見を生むことができる。そして本来、家族とは変化していくお互いの姿を発見しあっていくべきではないか。私は、そう考え、家族間コミュニケーションを掘り下げることにした。
2.研究の目的
本研究では、家族間コミュニケーションを活性化するためのきっかけとなる協働メディアのデザインに取り組む。〈協働〉とは、ともに力を合わせて何かを行うことである。何か一つのことを一緒に行い、経験することで会話のきっかけを生んだり、深い絆が生まれたりすることに着目し、家族それぞれが協働して成り立たせることを通して家族仲を深めるメディアを提案することが目的である。
3.先行事例との関連
写真を通じた家族間コミュニケーションについて論じた研究として、山下清美による思い出コミュニケーション[1]が挙げられる。また、「撮った日が記念日」というコンセプトを掲げる、鈴木心写真館[2]からは、記念写真を撮ること自体が家族イベントとして位置付けることができる。写真を撮ること、かたちに残すこと、それらをみて語り合うことは、新しくコミュニケーションを作り出していると考えられる。本研究においては、もの作りをした「もの」がメディアになり、その時の写真や映像がメディアになり、一般的にメディアと呼ばれているものでなくてもそれらを媒介として思い出が語られたり、会話が生まれたりするという協働メディアの多重構造に着目した。
4.実験と考察
4.1.行なった実験
後期に入り実際に家族に向けてコミュニケーションの増加を図るため協働できるワークショップのような形で実験を行ってみた。映画「浅田家」を見て家族写真が協働になるという着想から、例として「なりたい自分を描いた紙に顔ハメしながら家族写真」「やりたいことをテロップに書いて家族写真」を行った。しかし全く家族の協力を得る事ができず、むしろ家族の仲が悪くなっていくように感じた。
4.2.その考察
考察としては、手間のかかるようなものや時間が多くかかるものは忙しい親や受験期の弟たちには、ハードルが高く、協力してもらうのが難しい事がわかった。その結果、皆が毎日行う生活の一部を協働によって少し特別にすることによって家族間コミュニケーションが増えるのではないかと考えた。
5.成果物
5.1 お家居酒屋
お家居酒屋では、食事という日常の生活を特別にするというコンセプトで協働する事を図った。外食でも良いが時世を鑑み、自宅を居酒屋風に飾りつけたり、メニューを作ったりして自分たちオリジナルの空間作りをみんなで行った。それぞれに役割を割り当てることで全員が店員でお客さんであるような空間を作る事ができた。それぞれが制作した立札やメニュー、料理などが会話のタネになった。また、家族全員が揃って食事をするという事も少なくなっていたため一緒に食事をするということの大切さも再確認する事ができた。

図1.おうち居酒屋の様子
図2.手作り居酒屋風メニュー
5.2. 家族アルバムの整理
写真は撮影当時の被写体の状況だけでなく、背景や時代も残す事ができる。しかし、撮影したは良いものの、現像しても束になって保存されているだけの場合が多い。今回家族でアルバムを作るという協働をすることで兄弟が赤ちゃんの時は皆同じ顔をしているとか、両親がこんなに若かった時代があるのかとか、当時の思い出話などで大いに家族間コミュニケーションのきっかけを作る事ができた。また、アルバムは今後も残り続けていくので整理する時もふと見返す時もまたコミュニケーションのきっかけとなるだろう。

図3.アルバム整理の様子
5.3. 純平サンタ作戦
本成果物は、四男の純平の協力を得て、普段はクリスマスプレゼントをもらう側の弟にサンタになってもらい、プレゼントをあげる側になっている両親や兄たちにもクリスマスのギフト感を感じてもらうという「純平サンタプロジェクト」をコミュニケーションのきっかけとして動画制作したものである。もらう側ばかりではなく、あげるよろこびも弟に知ってもらえるきっかけにもなったと感じた。
成果物動画:
図4.純平サンタさん
6.おわりに
サテライトキャンパスでの発表会では、様々な外部のお客様に研究発表を見てもらう事ができた。たくさんのコメントをいただいた中で、他の家族でもできるようにするためにもっと抽象度を高めて汎用性がある方が良い等の意見もあった。前期の時点では他の家族でもコミュニケーションのきっかけを生み、仲を深める事ができるような仕組みを作りたいと考えていた。しかし1年間の研究を通して、全てに置いて汎用性が高いものだけが良いデザインというわけではないと考えた。むしろ全く同じ家族はいないからそれぞれの家族の中の関係性やタイミングによって、どのようにしたらコミュニケーションが生まれるかということを意識し、その瞬間の家族にしかできないデザインでお互いを気遣い合うという事が家族仲を深める上で一番大切であるという結論に至った。最終発表会の講評では、栗芝教授におうち居酒屋が興味深く、おうち〇〇としてキット化すれば他の家族でもできる汎用性を付与できるのではないかと講評いただいた。また山下教授には、写真を撮る事自体は面倒臭いと考えていたものの、アルバムを作るのは楽しんでできた事から、アルバムを作るために写真を撮るということを提案してみることで写真を撮ることをスムーズに進めるのではと講評いただいた。1年間を通して、考えるだけでなく実際に手を動かして試行錯誤することの大切さを感じる事ができた。

図4.展示会での様子
参考文献
[1]映画「浅田家」
[2]幻の「日本的家族」


