Keywords: グラフィックデザイン、情報デザイン、アイデア発想、タイポグラフィ

[NE30-0174F/CDプログラム]
1.はじめに
私たちは、日々生活していく中で広告を自然と目にしている。特に現代では野外広告や交通広告だけではなく、web広告が普及したことにより、広告を目にしないで生活をするということはほとんどなくなった。
広告は消費者に対して企業が商品の認知度を上げるために行っている宣伝方法の一つである。そのため、新しいサービスなどについて知ることができるなど、消費者が欲しい情報が掲示されていることがほとんどである。しかし、過度な広告表示によって不快感を感じたりするなど、いいイメージがないという人も多く、web広告においては非表示にするアプリケーションなども普及しているのが現状である。
その中でも、電車内の紙媒体の広告は、すべての乗客に共通の内容を提示しているため、広告内容と受け取り手によっては違和感が顕在化しやすい。広告は、単なるビジュアルではなく、すべて意図的につくられたメッセージ(作為性)をもつ。そこに焦点をあてた偽の広告を配置することよって、今までとは違った視点から広告を見るきっかけを提案したいと考える。
2.研究の目的
本研究では、普段自然と目にしている広告について調査し記録をまとめることで、人々の生活と広告との関係性を考察する。
また、当たり前のように日頃見ている広告の図像を組み替えることで、違和感を生み出すとともに、広告というメディアの作為性について視聴者に考えさせるきっかけを提案することを目的とする。
3.調査と考察
3.1.先行事例との関連
広告における消費者への違和感を作り出している事例として、マンションポエム[1](図1)が挙げられる。マンションポエムとは、マンション広告において土地の特徴や自然のキャッチコピーを詩的に表現することで、マンションの魅力と独特の世界観を表現しているものである。都心の高級マンションの広告などによくみられ、マンションとしての売り文句はほとんど使用せず、立地の良さだけを差別化させるために考えられたものがほとんどである。
この事例から、企業が売り出したい商品と消費者に訴えかけるキャッチコピーに違和感があることによって、その広告に興味が沸き人々の話題性を惹きつけることができたと考えられる。そこで、普段何気なく見ている広告の登場人物を元の広告から変化させることで、普段とは違う点から興味を惹くことができるのではないかと考える。

図1.マンションポエム
3.2.事前調査
オフライン広告の現状を調べるために、ほぼ毎日利用する電車内広告の定点観測を行なった。調査内容は、広告の掲示量と乗車率の変化、掲示されている広告の種類である。掲載量に関しては、調査期間内に緊急事態宣言が発令されたため、乗車率が著しく低下したが、それと連動するように広告の掲示量も同様に減少した。また広告の種類については、多く掲載されている広告が路線ごとに違っており、大学、大型施設、ニュースなど地域によって様々なものがあった。この結果から人の動きと広告の掲示場所に関して強い因果関係があることがわかった。
4.成果物
4.1.図像入れ替え広告
電車内に掲載されている広告の中から、人が大きく描かれている広告について、登場人物の性別や年齢、描かれ方や表情、知名度を変化させたものを、いくつか制作した。図1の画像では右二つの男性の広告に違和感を感じるという感想が多く出た。そのような点から、図像を入れ替えた広告をそれぞれ並べ、登場人物の見た目を変化させることによって、視聴者に違和感を与えることができるということがわかった。このことから、図像の操作によって内容の捉え方に大きな変化が現れるということを実感することができた。

図2.図像入れ替え広告
4.2.エリアマップ
図像入れ替え広告による視聴者への作為性をわかりやすく表現するため、全体を見渡すことができるようにmiro上にエリアマップを作成し、エリアごとに広告の登場人物の年齢を分けて掲載しものを制作した(図2、図3)。各エリアにはその年代を表現する駅などのオブジェクトを集めることで、エリアの年齢層の印象を作り、そのエリアと年齢が近い図像入れ替え広告を仮想電車に掲載した。具体的なエリアとして、若者エリアは渋谷・原宿駅、社会人エリアは新宿・新橋駅、高齢者エリアは巣鴨駅をイメージして作成した。これらのエリアマップによって、エリアごとの図像入れ替え広告による視聴者への違和感や、対象となる年齢層の違いによる印象の変化が見比べやすくなり、視聴者に与える作為性についてわかりやすく表現することができた。

図3.miro上に制作したエリアマップ
図4.エリアマップ内:若者エリア
エリアマップを作成したことにより、エリアイメージの年齢層とは違った広告を掲載した際に違和感を感じることができた。
4.3.研究室展示会
上平研究室のメンバーでサテライトキャンパスにて研究結果の展示会を行った。miroの画像と図像入れ替え広告をいくつか印刷し展示した。フィードバックとして脱毛の広告は女性のイメージが強いため男性や高齢者の広告は違和感を感じるという意見を男性からいただき、その後自分たちは脱毛をしているかどうかという話になった。このような点から、男性が男性の脱毛広告を見ることによって、今まで他人事に感じていた脱毛という行為に対して興味を持ち、自分のことのように考え始めているということがわかった。
5.おわりに
本研究では、普段何気なく見ている広告について、制作者の視聴者に対する意図(作為性)について、登場人物を変更させることによって視覚的に表現した。今回は性別や年齢のイメージがしやすいという点から脱毛や美容系の広告を多く取り上げたが、男性や高齢者に入れ替えるとほとんどの広告で違和感を感じることができた。そこから、街中には女性で構成された広告が多くありその状況に見慣れているのではないかと考えられる。また、最近ではSNSなどに写真を投稿する習慣があるという点から、特に女性は見た目を気にする傾向にあるため脱毛や美容に関する広告ではターゲットである女性が多く使用されているのではないかと考えられる。
これらの研究から、電車内などの広告について、描かれているそのままの意味だけでなく様々な方面から見ることで、制作者の意図や世間の流行などを考察し、ちょっとした日常を楽しむきっかけになることを願っている。
参考文献
[1]高級マンション広告コピー「マンションポエム」を分析する
https://dailyportalz.jp/kiji/130830161597
