Keywords: ゲームデザインフレームワーク,ゲームデザイン手法,発想法、ゲームデザイン教育

[NE30-0035D/PCプログラム]
1.はじめに
Scratchなどノンコードのプログラミング教材が普及し、初等・中等教育において学習者がゲーム制作に取り組むことも多くなった. だが、実際にゲームを制作するには多くの要素が必要になる。ゲームはプログラムだけでなく、イラストや楽曲、ゲームの中心となるルールや遊びも一緒に制作する必要があるためだ。イラストや音楽はフリー素材が多く存在しているため流用も簡単だが、ゲームの遊びやルールは画集者本人が考える必要がある. しかし、情報教育の場ではプログラミングが中心でゲーム制作に必要なルールや遊びの考え方についてはあまり触れられない. 実際、専修大学ネットワーク情報学部2021年度前期に開講されている「情報表現演習」では[1]ゲーム制作を課題としている一方、ゲームデザインについて指導する内容は含まれていない。そこで、ゲーム制作における遊びやルールをデザインの視点から理解を深めつつ、学習者がアイデアを発想するプロセスを支援する必要があると考える.
2.研究の目的
本研究では初等・中等教育のプログラミング教育においてゲーム制作の諸学者が用いることのできるアイデア発送ツールを開発する.また、このツールによってアイデアを見つけるだけでなく、ゲームを成り立たせるルールへの理解を深め普段遊んでいるゲームを新しい視点で解釈できるようになることを目標とする.
3.調査
ゲームアイデア発想の先行事例としてEMS frameworkが存在する.[2] このフレームワークは「〇〇を××して(手段)、□□を△△する(目的)」という文章の穴埋めをすることでゲームのアイデアが出来上がるというものである. このフレームワークの良いところは難しい知識を使わずとも誰でも簡単に小さなアイデアをゲームにまとめ上げられるところである. しかし、ゲームの元となるアイデアがない場合このフレームワークを利用することができなくなってしまう. アイデアは誰でもすぐに思いつくものではないため少し補う必要があるだろう. 前期では表現演習の履修者を対象に対話を用いたアイデア発想の検証を行なった。この検証では対話のみを用いてアイデアを見つけようとしたが、対話からアイデアに昇華されるまでの糧が不明瞭であったためアイデアに繋げることができなかった。そのためより手続き的に利用できるアイデア発想の方が良いと考える.
4.検証
4.1.しりとりを使ったアイデア発想
元々あるEMSフレームワークをベースに穴埋めに使えるアイデアを生み出す構造を加えてより手続き的に扱えるようにする. 今回は短い時間でアイデアのもととなる情報を多く生み出す方法としてしりとりを用いる. しりとりは一回行うだけで多くの単語を得ることができるため、そのままEMSの穴埋めに利用できる. また、しりとりを複数人で行いそのまま一緒にゲームデザインを行うことでフィードバックがあり1人で行うよりよりゲームが作りやすい.
4.2.第1回ワークショップの実施
千葉県立柏の葉高等学校の情報理数科に協力を依頼し、第一回ワークショップを実施した.この検証では参加者にしりとりで出た単語を自由に選ぶ場合とこちらが指定する場合の二つのパターンを試してもらいどちらがアイデア発想しやすいか検証した. しかし、2人1組でアイデア発想をさせたため分担して1人1パターンでアイデア発想をしてしまい、複数人でのアイデア発想のメリットがなくなってしまった。また、ワークシートのデザインが悪く特にE M S frameworkの項目が使いにくくうまくフレームワークを使えていなかった.
4.3.第2回ワークショップの実施
前回同様千葉県立柏の葉高等学校情報理数科に協力を依頼し、第2回ワークショップを実施した. 前回と違いしりとりで出現した単語をランダムにこちらが選び、それを利用してフレームワークを行うパターンのみでアイデア発想を行なってもらった. また、ワークシートを改良し使いやすさの向上を目指した。その結果ほぼ全ての参加者がアイデア発想に成功した.

図1.第2回ワークショップの様子
4.4.第3回ワークショップの実施
A3タイプのワークシートの制作を行なったまたこのA3タイプのワークシートを研究室内の大学生7人に協力してもらい実際の使い心地を検証した. 検証の結果しりとりの単語選択方法に偏りが生まれてしまうことと、その後のフレームワークからルールを考える工程が難しいとわかったため、改良を加えたものを今回の研究の成果物とした.
5.成果物
本研究における成果物は提案する発想法とその発想法に用いるワークシートである.
5.1.発想法
本研究で提案するアイデア発想法は以下の通りである. 1. 2人1組を作る. 2. しりとりを行い20単語分続ける. この時創作物に関する固有名詞の利用を禁止とする. 3.でた単語から奇数番目の単語を二つ、偶数番目の単語を2つ取り出す. 4. 取り出した単語のうち奇数番目と偶数番目の単語の組み合わせを用いてE M Sフレームワークを穴埋めする. 5.出来上がったフレームワークからプレイヤーにとってどういったところが面白いのか考え「プレイヤーが〇〇するところ」という文章を穴埋めする. 6.最後に穴埋めした文章をもとにルールや仕様を考えシートに記入する. また、ワークショップではうまくアイデアが出ない組のために動詞が出てくるガチャガチャを用意しランダムに単語を与えアイデア発想の補助も行う.
5.2.ワークシート
本研究の成果物として制作したワークシート.しりとりの単語を記録する表と2つの穴埋めフレームワークが書かれている.図2

図2.最終成果物のワークシート
6.考察
6.1.ワークシートの役割
アンケートワークショップの参加者のうちほぼ全ての参加者がゲームアイデアを生み出せていたため、発想法としての役割を果たしていると言えた. また、感想の中には「何もないところからアイデアが生み出せると知れた」というような意見もあり、目標の一つである「アイデアを発想し新しい視点で遊びを考える」を達成できたと考える. 一方で手続き的な強制発想法にしてしまったため、「ゲームデザインへの理解を深める」は達成できていないと言えるだろう.
6.2.しりとりのランダム性と偏り
しりとりの結果を5組分115単語集計し分析した。その結果単語の被りはほぼなく、多くの単語が収集できた一方で一部の単語のジャンルに偏りがあり、特に食べ物に関する単語が26単語と多く偏りが見られた.しりとりは1人によって出てくる単語はバラバラではあるものの食べ物といった人にとって共通して一定の関心がある要素においては偏りが生まれてしまうことがわかった.

図3.記入されたワークシート
7.終わりに
今回の研究ではしりとりによるアイデアのもととなるワードを生み出し、E M S frameworkの穴埋めに用いることでランダム性のあるアイデア発想を提案した。実施したワークショップでは想定通りアイデア発想に成功し、新しい視点で遊びを考えさせることができた。本研究でサポートできるのはあくまでゲームのもととなるアイデアの発想までである.しかし、ゲームデザインはそれだけでは終われない.今後の研究ではアイデアが生まれたその後のデザインについても補助できるものを提案したいと考えている.
参考文献
[1]2021年情報表現演習 6月29日
http://www.ne.senshu-u.ac.jp/~expr/21/21_11.html
[2] ゲームアクションの手段目的構造を用いた ゲームアイデア発想ワークショップ
http://digrajapan.org/conf2015/digraj_conf2015_proc.pdf