Keywords:習慣,メタ認知,記録

[NE30-0143J/MPプログラム]
1.はじめに
インターネットの普及により、独学でも技術を学ぶことや目標達成するための方法を知ることができる時代となった。例えば、検索エンジンで覚えたい技術のキーワードに関する十分な情報を入手することができる。また今では動画投稿サイトで映像を使ってレクチャーしたものもあり、より分かりやすく無料で学ぶこともできる。しかし、実際に技術習得や目標達成をすることができる人は少なく、多くの人は身体的、心理的負荷を回避するために理由をつけてやめてしまう。記事や映像は、継続に成功した人が成長過程をアップしているが、BeforeとAfterの成果は書かれていても継続するために何をしたかのプロセスが書かれることはほとんどない。筆者はその過程こそが最も重要であると断言したい。
そこで、実際に筆者が継続していき、その過程で必要だと思ったことが何かを記録していく。そしてその記録をもとに、いままで挫折してしまっていた原因や継続するために必要な工程を考察する。なお、本研究は卒業演習でおこなっているという背景があり、それが継続の要因のひとつになっていることを念頭におく。
2.研究の目的
本研究では、筆者が一人称視点で長期的に「継続すること」のエスノグラフィーに挑戦する。その過程で発生した感情や行動を記録し、省察することで、続けられない原因や続けるために必要な要因を見出していく。一連の実践をまとめることで、継続する人を手助けするためのデザインを行うことを目的とする。
3.調査
3.1.先行事例との関連
まず前提条件として継続と習慣の違いは何かの行動が自動化されているか否かである。人の脳は行動に関する決定をする部分と、自動化された行動のためのパターン認識を行う二つの部分からなり、なかでも特定のパターンを認識し、それを繰り返す大脳基底核と何かした時の結果や長期的な利益を理解でき、大脳基底核を抑え込む力を持つ前頭前野が人間の行動を習慣化するのに重要な役割を担っている。 [1]
小さな習慣はモチベーションに頼らずとも意志の力のみで継続することができ、習慣化していく方法である。それは、脳の抵抗を極限まで下げた方法であるが、その抵抗と向き合うことで継続することができる可能性もあるのではないかと思われる。
3.2.継続の実践方法
継続することの対象として、クロッキーを毎日実践し、継続していく過程で気づいたことを記録していく。継続メニューとしては、毎朝朝8時に起床し、起床後そのままクロッキーをする。また、その日の体調に合わせ強度を変えるなど継続が続くように工夫をし、その工夫が継続に有効だったかどうかを記録する。前期での継続過程で継続をするときに必ずしんどいという負の感情が発生するということが分かっているため、後期ではそのしんどいという感情を視覚化するしんどいメーターを作成、利用し、メーターの上下によって負荷がかかり過ぎていないかを調整し継続を習慣にしていく。その過程でわかったことを記録、考察し、再び実践することを繰り返していく。
4.成果物
4.1.しんどいメーター
しんどいメーターは、当初スマートフォンアプリで実装する予定だったが、アプリを開く過程で面倒という感情が芽生え、継続に悪影響があると判断したため、アナログ媒体で作成した。アナログでの初号機では、しんどいメーターの数値を5段階で表現し、計測を行った。しかし、その過程でしんどいという感情が曖昧なものであるため、より感覚的に表現できるようにゲージに変更した。またしんどさが視覚的に一瞬でわかるように負荷が高い時ほど色を濃くすることでより感覚を可変的に動かせるようにした。
図1.しんどいメーター初号機
図2.しんどいメーター(ゲージ型)
4.2.継続記録
一年間通して継続してきたクロッキーの記録をまとめ、継続してきた中でクロッキーに対する考え方の変化をクロッキーとともにまとめた。継続期間では気付くことができなかったことを省みることで線の変化や絵のバランスなど成長を確認することができた。
図3.クロッキーの継続記録
4.3.継続の実践結果
継続していく中でしんどさを減らすことに最も有効だったのは、継続することである。しんどいメーターの利用によって、ある一定の継続を続けるとしんどいメーターが安定することがわかった。前期ではしんどいメーターを使用していないが、しんどさを感覚的に測っており、そのときもしんどさが安定したことから再現性があり有効であると考える。次に有効だった工夫は継続メニューの負荷を軽減することとメニュー後にご褒美を用意することが効果的であると感じた。前者はしんどさの軽減、後者は短期的なモチベーションの上昇を図っており、しんどさが安定するまではこのような工夫を駆使することが継続につながる。また、継続が失敗する原因で有力だったのが、過度なメニュー、環境の変化、発表機会の喪失の3つが大きかった。理由としては、この3つの要因が出た時にしんどさの上昇を確認することができた。また、継続が習慣になる前に継続を怠るとその後も怠りやすくなり継続が困難になった。また、前期ではクロッキーの他に筋トレも行っていたが、夏季休暇で継続が途切れ、後期に継続のやり直しをした際にその二つを一度に継続化しようとしたところしんどさが跳ね上がったため、継続をする場合は一つずつ行うことが重要であることがわかった。
5.おわりに
本研究を通して、改めて継続することの難しさを痛感した。しかし、今まではモチベーションや根性でなんとかしようとして失敗してきたが、本研究でしんどさを中心に様々な実践、考察を行うなかで長期間継続することを達成できたことが何よりも成果物である。継続に再現性があることも理解することができ、この経験を無駄にしないようこれからも継続に挑戦していきたい。
また、本研究は自分と向き合う研究だったため、私に特化した部分もあるだろう。しかし、他者にも該当する部分や共感する部分も少なからずあるので、ぜひこれを読んだ人がこの結果を参考にして目標達成のための継続につながってほしいと願っている。
参考文献
[1] スティーブヴン・ガイズ(2017)『小さな習慣』ダイヤモンド社


