
Keywords: オープンデータ, 食べ物, 食事, ニュース
1.はじめに
近年、国や自治体がオープンデータ[1]の推進に努め、行政の透明化や信頼性の向上に向けた取り組みを行っている。実際にオープンデータを活用したアプリケーション開発のコンテストやワークショップが行われており、関心が高まっている分野と言える。
しかし、細かな数字の羅列を見て、どういったデータであるのかを瞬時に理解することは一般的には難しいことである。また、問題が国や自治体単位の大きい問題になると他人事の様に感じ、敷居が高いと注意を向けなくなってしまう。この状況はデータを公開する側、される側の双方にとって好ましい状況とは言い難い。
そこで、数ある社会問題の中で誰もが密接に関係している「食」の視覚化に着目した。可視化されたデータを「食べる」という行為を通じて一般の人々が問題へ目を向ける契機を作ることが出来ると考えた。
2.研究の目的
本研究では、食べ物に関連するデータを用いて、グラフ化された食事、「食べられるグラフ」の制作を行う。また、それらをネット上で公開することによって、オープンデータを実体化するデザインアプローチについての検討を行うことを目的とする。
3.先行事例との関連
「食べられるグラフ」は専修大学ネットワーク情報学部で課される課題のひとつである。この課題は、新聞社や公的機関が発表した食糧に関するニュースを収集し、数量の変化を食べ物やパッケージの中に落とし込み、紙面上でデザインするという内容である。成果物は授業内で公開され、表現の方法を知ることはもちろん、面白い喩え方を肌感覚で捉えることが出来る。
本研究では、その課題の発展編とし、オープンデータを活用した、本当に「食べられるグラフ」を制作する。
4.調査と分析
前期では、神奈川県のオープンデータを収集し、それらを食事に落とし込むための数値に変換し、実際に料理で表現するというプロトタイプを5種類作成した。
データの収集においては、どのデータならば食事に落とし込めるのかという基準を設定する必要があり、食べているご飯が美味しくなくなる事実があるデータは扱いが難しい。
また、食べられるグラフがグラフとしての役割を果たすためには、作った料理が「グラフに見える」ということが必要になる。そのため普通の料理よりも見せ方が重要な課題になり得るということが判明した。
後期ではそれらを踏まえ、食べられるグラフをブログ形式で全12回更新、公開することとした。
ブログ形式で公開するにあたって、前期で判明した食べられるグラフの純粋な見せ方だけでなく、見ている相手がいるという前提の文章量や、詳細を削らずに内容をどれだけ残すかという点は試行錯誤した。
5.成果物
食べ物に関連するニュースやデータを収集してグラフ化された食事を制作する。また、ニュースの内容や制作した過程を自身のブログ[2]の【食べられるグラフ】という企画で全12回更新、公開[3]した。
5.1.コンセプト
身近なニュースやデータを食べること(作品を見ること)を通じて、他者にも共感や興味を持ってもらうことである。また、ブログの更新を通じてオープンデータの実体化への取り組みを知ってもらうことである。
5.2.食べられるグラフ概要
以下に具体的に更新した記事(一部)である。


記事の構成は、1)キャッチーな見出し、2)ニュースソース、3)抽出した数値の表、4)完成図、5)レシピ、6)制作した所感 の6点がベースとなっている。
一見ただの料理ブログであるが、真面目にニュースやデータに着目しているところに面白いと思われる内容を意識し更新した。
6.評価と考察
6.1.評価方法
評価方法はアクセス解析と実際にもらった感想から判断することとする。
6.2.結果と考察
アクセス解析より、この企画が始まる前からの読者が数名閲覧していることが判明した。PV数は高いわけではないが、回を追うごとに高くなっていっている。
実際に得られた感想は「本当に食べられるから面白い」という見た目に関する内容のものと「本当にこれだけ差があるとは」という見た目から得られる情報に驚いたというようなものであった。さらに「ユーモアがあって読みやすい文章だった」という文章自体についての感想も得られた。
以上の2点より、食べられるグラフとしてオープンデータを実体化することは、データの意味を「見る」だけでなく、「食べる」と重ね合わせることで知るきっかけを作る方法として有効だと考えられる。
6.3.今後の課題
ブログを更新するにあたって、アクセスに関する数字の伸びが悪かったことが十分な評価がし難い要因であると考える。原因はブログの認知度が高くならなかったこと、内容の不足の2点が挙げられる。
まず、認知度に関してはFacebookやtwitterのSNS類を用いて宣伝をしていたものの、高アクセス数と呼べるほどには至らなかった。宣伝の仕方や通常記事の更新など、ブログとしての価値を高める工夫が必要である。
次に、内容の不足に関しては読み手が興味をもつ内容でない場合と、表現方法に問題がある場合がある。どちらの場合でも、興味を持つような文章の書き方やデータ収集における着眼点、データを上手く使うアイデアの引き出しを養っていく必要がある。
また、食べられるグラフ自体が本研究の一回のみで終わってしまってしまうことも課題であると考える。ニュースやデータがある限り、誰でも食べられるグラフを制作することは可能である。食べられるグラフをやってみたいと思わせる働きかけも必要だったのではないかと考える。
7.おわりに
食べ物に関連するオープンデータを用いてグラフ化された食事、「食べられるグラフ」を制作し、それらをインターネットで公開することが出来た。更新後のアクセス数の変動や個人的な感想を貰える機会など、目に見える成果があったため、更新するという意欲にも繋がっていった。
卒業演習を通じて、沢山のデータやニュースに触れる1年間となった。私自身だけの話ではなく、食べられるグラフを見た人にとっても、今起きている事柄や現状の数値を少しでも体感することが出来たのではないかと考える。また、食べられるグラフを伝える側に立ち、作品を見てもらうということは自分の中で大きな経験となった。
8.参考文献
[1]総務省−オープンデータ戦略の推進
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/opendata/
[2]さとうのごはん!
http://blog.livedoor.jp/c12h22o11_skrs/
[3]食べられるグラフ アーカイブ
http://blog.livedoor.jp/c12h22o11_skrs/archives/23554609.html