手書きフォントの実利用を通したテキストコミュニケーションへの影響分析

Keywords:フォント、手書き、テキストコミュニケーション

[NE19-1181A/PCプログラム]

1.はじめに

情報化社会が進んでいる現代では、文字によるコミュニケーションは電子データでやり取りされるのが基本である。電子メールからはじまり、Facebook、LINE、TwitterなどのSNSでのコミュニケーションが盛んである。それに伴い、文通といった紙による文字のコミュニケーションはあまり行われなくなり、手書きの文字を見る機会は年を経るごとに少なくなっている。また同時に、人々の手書き言葉はシステムフォントで標準化され、それぞれの筆跡が持っていた細かな雰囲気や表情は消し去られている。

しかし、手書きの文字を見慣れなくなったことで、手書きの文字のみだけが生み出せる雰囲気や表情が「オシャレである」や「可愛い」といった再評価がなされ、手書き文字が再び注目される風潮が形成されつつある。そしてフォント作成アプリケーションが一般にも普及し、自分で作れる環境が整いつつある。

2.研究の目的

本研究では、1)まず自身の手書きの文字をもとにフォントを制作する。次に、2)その手書きフォントを用いることで、それが持つ雰囲気や表情が、テキストコミュニケーションをどのように変えるのか、従来のシステムフォントと比較してどのような違いが生まれるのかを観察調査する。これらをもとに、手書き文字に宿された個性の価値を再検討することが目的である。

3.先行事例との関連

手書きの文字は独特の味があるという認識が広まりつつあり、それに伴って手書きフォントの制作が増加傾向にある[1]。さらに、それらのフォントを用いてゲームや漫画のロゴが制作されたり、ミュージックビデオ内で映像表現の一種として活用されたりなど、芸術分野における手書き文字の採用例も増加している[2]。テキストコミュニケーションでの事例を挙げると、LINEのクリエイターズ絵文字に手書きの文字を使用した商品がある[3]

しかし、これらは芸術的意味合いが強く、クリエイターの作品として使われることが多い。本研究が目指すところは、テキストチャットなど普段使いできるものである。

4.成果物

4.1.デジタルフォント『Handmade font made by Ryu-chan』

実際に筆者の筆跡をコンピューター上で使用できるようにデジタルフォント化した。使用したソフトはIllustrator・Photoshop・Glyphsの三つである。以下(図1)は、実際に制作したフォントの組み見本である。現在、英文字・数字・ひらがな、カタカナと一部の記号がフォントとして制作完了しており、最低限の英文とひらがな・カタカナのみを使用した日本語文が書けるようになった。

図 1 組み見本

また、このフォントを利用した作品も制作したので、以下に紹介する。

4.2.LINEクリエイターズ絵文字『りゅうちゃんの手書きデコ文字』

前項で紹介した先行事例[3]を参考に、作成したフォントを使用してLINEクリエイターズ絵文字を制作した。以下(図2)は作成した絵文字のプレビューである。

図2 LINE絵文字のプレビュー

4.3.他フォントとの組み合わせによる手書きフォントの使用イメージ

今回制作したフォントは英字・数字・ひらがな・カタカナのみ収録していて、漢字は含まれていない。これでは、普段使いするフォントとしては不十分であると考える。なので、漢字のみを他のフォントから拝借し、普段使いするイメージを掴みやすくするために、履歴書と反省文を制作した。以下(図3)は制作した作品である。組み合わせたフォントは『櫻井幸一フォント』である。

図 3 履歴書(左)と反省文(右)

5.考察

5.1.フォントの使用感について

使用し始めた時は、己の手書きの文字がデジタルの画面に表示された時、何とも言えない違和感を覚えた。これは、己の声を録音して聴いたときに覚える違和感と似ている。しかし、使用し続けるに従って違和感は徐々に無くなっていき、自分が作った物が形になっていくのを見て、むしろ愛着が湧いてきたように思える。

普段使いできることを目的としたフォントを作るので、自分が普段書いている字体になるよう、丁寧に字を書こうと意識するのではなく、むしろ無意識に近い状態でフォントの原字を書いた。ただ、字が丁寧でない分雑然とした雰囲気があるので、履歴書や反省文などの真面目な文書に対して使用するのはあまりよろしくないと思った。

5.2.LINE絵文字の使用感

友人のHくんに協力してもらい、LINE絵文字を使ったトークを行った。以下(図4)は、実際にトークを行った画面のスクリーンショットである。

図 4 LINEのトーク画面

使った側である私の使用感としては、フォント使用時と同様の違和感を覚えつつも、己の字がラインのトーク画面に出ていることが、実際に手で書いている訳ではないのに、自分の手で字を書いているように思えた。そして、アナログな物でしかなかった手書き文字がデジタルの画面上に現れたことに、技術革新を目の当たりにしたような高揚感を覚えた。

使われた側であるHくんの感想は「書体が可愛い」「普通の字より与える印象が柔らかくなって良い」とのことであった。少ないサンプル数ではあるものの、手書きの文字はシステムフォントよりも好印象を相手に与えることがわかった。

6.おわりに

本研究では、手書きフォントがテキストコミュニケーションに与える影響について研究した。結果、システムフォントよりも柔らかい印象が相手に伝わることがわかった。これによって、手書きフォントを使うことは、テキストコミュニケーション良い影響を与える可能性が示唆されたと言えよう。

参考文献

[1]オシャレでエモい!手書き日本語フリーフォントと右上がり加工方法

https://wkwkdesign.com/japanese-handwritten-font/

[2] じん「後日譚」ミュージックビデオ

https://www.youtube.com/watch?v=zD-g1Sg4O5k

[3] かすれ声には、かすれ文字。

https://store.line.me/emojishop/product/5cff7c94100cc36ecbfc5b2f/ja