廃材を用いたランタン制作によるコミュニケーション生成の研究

Keywords:廃材,ものづくり,コミュニケーション,フィールドワーク

[NE19-1034J/CDプログラム]

1.はじめに

100円ショップやコンビニエンスストアの増加に伴い、便利で安価な商品が気軽に入手可能になった。その一方で、大量の廃棄物が生み出され、気候変動となって私たちの生活に跳ね返っている。こうした因果関係は多くの人々の中では結びついていない。哲学者の藤原辰史が、「ゴミとは、ある特定の社会経済状況のなかでのものの最終形態をあらわす言葉にすぎない」[1]と指摘するように、ゴミがゴミとなるのは我々の見方の問題があることに気づかなければならない。

そこでゴミに対する見方を変えるために、自分自身でものづくりをしてみる体験こそが有意義だろう。それは廃材から別の意味を見出すことでもあり、生み出したものをみんなで味わうことは新型コロナウイルスによって失われた祝祭が生み出していたコミュニケーションを新たな形で取り戻すことにもつながると言える。

そこで、私たちが普段から利用する灯と身の回りにある廃材を組み合わせたランタンづくりを行うことで、人々の住む地域・その地域の廃材・集う人々の関係を、ランタンによって可視化することを着想した。

2.研究目的

本研究では、商品とゴミと二分化された社会において私たちの周囲を取り囲む本来は再利用可能な資源がいかに廃材や端材となり、ゴミとなっているのかを、ランタンという手段を用いて可視化することを試みる。

また、自らがランタンを制作し、誰かと光を共有し、灯りを囲んだ空間を作り出すことで、その場にコミュニケーションを生成することを目的とする。

3.先行事例との関連

ランタンなどの灯りを利用し、まちの景観を守っている取り組みは日本で多く行われている [2] 。例えば、京都では、それぞれ地域にあった特色の灯りを灯すことでこれらを観光名所と変化させた。姉小路では、地元の小学生、幼稚園児が図柄を描く行灯は地元の人たちの風物詩となり、訪れる人々の心を暖かくする。このように灯によって、地域と人を結びつけ、人々の心を暖める取り組みは全国各地に存在する。

しかし、美しい景観ではなく、ゴミへの認識を変える取り組みとして行われている例はない。新しいモノを購入することを『豊かさ』とするのではなく、その地域で作り出される廃材を利用することで地域に埋もれた『豊かさ』を見出し、景観だけでなくその地域で生まれるモノへ新たな価値を生み出していくことが必要である。

4.研究方法

4.1.企画

本研究では、世田谷の風の丘めぐみ保育園のご協力のもと、上平研究室にて取り組まれる「ULTRA LOCAL LANTEN PROJECT」の活動の一環として子どもたちや親子でのワークショップを企画し、実施した。

「ULTRA LOCAL LANTEN PROJECT」とは、全国各地で地元の廃材を自らの足で集め、ランタンの材料として再構築することで、地元を灯りで映し出そうという取り組みである。今回は、保育園と園児たちがよく散歩や遊びに訪れる羽根木公園をフィールドに地域と保育園を映し出すランタンを制作する。

保育園の理事長先生、園長先生、担任の先生と会議を重ね、コンセプト、日時構成、対象となる園児の年齢、使用する道具などを決定した。

コンセプトは、「家族や地域の人へのおかえりなさいの灯」とし、園児の活動を考慮してフィールドワーク、ワークショップ、点灯式と3段階に分けての実施を計画した。限られた人数の大人の補助での作業が予想されたため安全面を考慮し企画を進めることが必要とされた。

4.2.事前準備

園児たちがゼロからランタンを制作することは困難であると予測されたため、あらかじめ土台となる部分を廃材で制作した。

そこで、普段園児たちにも馴染みがある傘、牛乳パック、ペットボトルの廃材を利用し、安全でかつ子どもたちの創造性を活かすことのできる土台を考案した。

傘と牛乳パックの廃材を利用した吊り下げ型ランタンとペットボトルの廃材を利用した防災型ランタンである。写真は、子ども達の作品である。(図1)

1 吊り下げ型ランタン / 防災型ランタン

5.研究結果

5.1.フィールドワーク

羽根木公園にて、園児たちと2022年11月4日にフィールドワークを行った。公園に落ちているイチョウやどんぐりを拾い、ランタンに使用する材料を集めた。

拾うことに対して全く興味のない園児に対して、「その葉っぱかっこいいね!」などの肯定的な言葉をかけると、周囲の園児たちを含め積極的に活動する場面が多く見られた。また、人見知りをする園児たちと一緒になにかを発見することで次第に話しかけてくれるようになった。同じフィールドに入り、共有するという体験は心理的距離を近づけていった。

5.2.ワークショップ

11月21日、11月26日の2日間に渡り、園児向け、親子向けのランタン制作ワークショップを開催した。

1日目は、園児16名の参加があり、羽根木公園で拾ってきたどんぐりやイチョウを材料にそれぞれの土台に貼り付け、ランタンを制作していった。フィールドワークと同様に興味のない園児に対して、肯定的な言葉をかけると活動が積極的になり、一緒にランタンを作るという活動を楽しむ様子が見られた。

2日目は、全9家族、保護者の方を含め20名の親子の参加があった。前回までの材料に加え、園内で育て、給食で残されたみかんを乾燥させたドライフルーツを加え、ランタンを制作した。園児たちよりも大人の方が熱中する場面が多く、一緒にものづくりをするという活動を通して、保護者と子どもの両者の長所を拡大し、お互いを褒め合うという光景が多く見られた。ものづくりという体験を通すことで身近に溢れている廃材へ新たな価値を見出し、「家でも作ってみます」と廃材を持ち帰る保護者もいた。

5.3.点灯式

2022年12月9日に保育園にて園児たちの帰宅前に点灯式を行った。(図2)

図 2 点灯式の様子

コンセプトである「おかえりなさい」の灯を灯すことで、保護者と園児、そして保育園の先生の三者間で冬空の下でも「暖かいですね」というコミュニケーションが多く生まれた。さらに、ある保護者の方からは、「ワークショップで制作したランタンを家族で灯すことが毎朝の習慣となり、家族にとって宝物になりました」という感想をいただき、部屋に大切に飾られている写真をいただいた。

以上の活動から、ものづくりという体験を通して、ゴミだと決めつけていたモノへの見方を変化させることができたといえるだろう。また、手作りの灯を灯し、可視化したことでモノへ新たな価値を見出すことが可能となり、人々の心を温める、祝祭性をもつ新たなコミュニケーションの場が生成された。

6.おわりに

 本研究を通して、モノへの見方を少し変化させることで必要のないと思っていたモノでも誰かと一緒に再構築し、灯を共有することで新たなコミュニケーションを生み出すことができた。また、普段身の回りに溢れる廃材への態度を考え直すきっかけとなった。

保育園だけでなく、子どもからお年寄りまでの全ての人を対象に「ULTRA LOCAL LANTEN PROJECT」の活動を広げ、ゴミへの認識を変えるための活動として期待していきたい。そしてそれらを囲む周囲の人たちの何気ない日常の中に灯りを灯していくことができればと考えている。

参考文献

[1] 藤原 辰史,『分解の哲学〜腐敗と発酵をめぐる思考』,(2019),青土社

[2] 夜間景観とまちづくり,京都市,

https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000296/296747/46-62.pdf,(2022,4,6),46-57