対人間の協力行動の意味に気付くためのボードゲームのルールの考察


Keywords: 協力行動, ゲーム

1.はじめに

私たちは常にグループや集団に属して生活をしている。日常から学校生活、仕事等の様々な場面で自分以外の他の人とともに行動をしている。その中で、集団で何か1つのことを成し遂げようとするときに必要となるのが協力行動である。しかしながら、このような協力が必要な場面において必ず全員が協力するとは限らない。利己的にふるまい、一人だけ楽をしようと考えるような人がいることも多い。そこで、利己的な行動をとる人は協力することで得られる利点を知らないのではないかと考える。近年の研究ではお互いが協力することがお互いにとって一番得であるとされている。[1]
協力行動が必要となる場面は多くある。そのときに進んで協力することができるように、学生のうちに協力行動で得られるものについて考えるきっかけを持つことが必要だと考える。

2.研究の目的

本研究では、高校生や大学初年度の人たちを対象とした「グループで協力することで得られるもの」について考える機会を提供するボードゲームを想定する。協力行動の意味に気付き、主体的に貢献する態度を育成するボードゲームのためには、どのようなルールが最適なのか、どのような形を取りうるのかを探求することを目的とする。

3.先行事例との関連

人の協力行動の原理を示した先行事例として、「公共財ゲーム」[2]がある。公共財ゲームは、一人だけ協力しないと、その一人が多くの利益を手にすることができるが、全員が協力すると、グループ全体の利益が一番多くなる原理がわかるシステムである。しかし、理論的に解説されているだけで、ストーリー性はなく面白いものとは言えない。
そこで本研究では、公共財ゲームのシステムを活かしつつ、参加している人々のストーリー性を取り入れて楽しくプレイすることができるゲームを制作する。

4.調査と分析

人が協力行動をするのはどのような状況や考えがあるのかを調べるために、ゲームシステムを変更しながら実際にプレイしてもらいながら調査した。

4.1.公共財ゲーム

公共財ゲームのシステムを元にし、4人グループで行い、全員に同じ金額を渡す。毎ターンごとにそれぞれ支出金額を決め、支出するというルールで行なった。このシステムを元に、少しずつシステムを変えていった。金額を最初は1000円に設定したが、現実的な金額にするために10000円に変更した。お金を支出するための状況を作るイベントは、最初は作らずに行なったが、何か指標がないと金額が決めづらかったため、参加するプレイヤーにイベントを考えてもらい、それをランダムに提示して金額を決めた。その結果、イベントは決まっていた方がいいという意見を得て、もとから決めているイベントをランダムで提示した。また、金額を決めるときに話し合いをしないパターンと話し合いをしないパターンも調査した。返金システムは、公共財ゲームのシステム通り全員の支出額を2倍し、均等に配分するシステムから、本人が持っている金額から出した割合によって順位をつけ、割合が高い人から多く返すシステムに変えたり、全体で集まった金額に対してそれぞれが出した割合が高い順から多く返金したりするシステムでプレイした。
以上から、イベント事を決めることで支出金額を考えやすくなった。さらに、話し合いの時間を設けることで金額の相場が決まった。しかし、お金という要素は協力と結びつかないのではないかという意見があった。

4.2.サバイバル

4人が遭難をし、救助が来るまで助け合いながら全員で生き延びるために協力する。自分のライフを削りながら食料探索や水作りをしてうまく全員に食料と水がいきわたるように協力するというルールで行なった。最初は5日間生き延びると終了したが、全員で何か一つのものを作り上げることが協力につながるのではないかと考えたため、助けを呼ぶための狼煙を完成させたらゲーム終了というルールに変更した。また、天候の変化や怪我などといったイベントも追加した。また、個人がそれぞれ決断する場面が必要であると考え、それぞれに違った能力を持った役職を与えた。
以上から、サバイバルでは命というマイナスの要素が強すぎて、協力というよりは人を死なせないために当たり前の行為をするだけのゲームになってしまった。

5.成果物

5.1.コンセプト

長期的な付き合いの中で、協力することによって得られるものを考えるきっかけを与えるためのゲーム。

5.2.(みんなの街づくりゲーム)概要

調査・分析をもとに「みんなの街づくりゲーム」(図1)のプロトタイプを作成した。ゲームシステムは、まず4人に街の4つのエリアの1人1エリアを担当してもらう。次に、それぞれに情報の開示をする。情報は、全体で共有する情報「全員が指定された場所にものを配置すると全体で街にくる人が増える」といった情報と、それぞれの個人にしか開示されない情報「全員が指定された場所を作らず、自分のエリアにものを配置すると、自分のエリアだけくる人が増える」という情報を開示する。それをもとに、話し合いをしながらそれぞれのエリアを完成させる。このとき、ほかのメンバーに自分が作っているエリアを見られてはいけない。そして、完成した4つのエリアを合体させて一つの街とする。このときに、配置されたものや場所によって自分のエリアにくる人の数と、街全体にくる人の数が決まる。最終的に街全体の人の数と自分のエリアの数を考えると、街全体で協力する形をとったほうが街全体の人の数が多くなるようになる。

6.評価と考察

6.1.評価方法

「みんなの街づくりゲーム」を制作するために、様々なゲームシステムを考え、条件を変えながら実際にプレイを繰り返した。そのときのプレイヤーの行動やゲームの結果からわかったことを評価する。

6.2.結果と考察

調査・分析で様々な条件でゲームをプレイしてもらったことで様々なことがわかった。まず、協力するためには話し合いが必要である。話し合いをすることでお互いの意思をある程度固めることができる。次に、毎回イベントが起こることによって、自分が支出するものの指標を決めやすくなる。また、ずっとお金を使って利益を目に見えようにしてきたが、お金が関わってしまうことでプレイヤーが自分の目の前の利益にしか行かなくなってしまい、うまくいかなかった。しかし、プラスの要素だけでなく、死といったマイナスの要素を取り入れてしまうと、マイナスの要素にはなっていけないという考えが働き、協力というよりは、死なせてはいけない使命感といった風に行動していた。
協力行動はどんな状況でも起こるものではないし、プラスの要素がお金であると私欲のために他人を蹴落として自分が儲かろうとするような状況が生まれてしまうし、マイナスの要素が強いと死なないようにすることが当たり前だという雰囲気になり、自分の意思を出しにくい状況が生まれていた。このようなことから、自分の意思でこの人のためなら協力しようと思える状況を作ることは難しいことがわかった。

6.3.今後の課題

さまざまな条件を変えて実感を行なった結果、自分で今後の利益や付き合いを考えて協力行動を起こすという場面は簡単には生まれないことがわかった。今後は、このような協力が生まれる場面を調査し、ゲームに組み込んで、協力について考える機会をもっと増やしていきたい。

7.おわりに

本研究を通して、協力行動の難しさと大切さについて多く考えることができた。これをもとにこれからの集団行動などに生かしていきたい。

8.参考文献

[1]R・アクセルロッド(1998)『つきあい方の科学』ミネルヴァ書房
[2]後藤晶 「協力行動と公共財ゲームに関する一考察: 経済学実験および心理学実験を中心に」
http://ci.nii.ac.jp/els/contents110009863961.pdf?id=ART0010382554