外来植物から新たな価値を創造するクラフトワークショップ


Keywords: 染物, 外来植物, 生田緑地, 岡本太郎美術館, アップサイクル

1.はじめに

地球上ではあらゆる生物がそれぞれの生態系を築いている。しかし、もともと地域にいなかった生物が意図的に人の手によって持ち込まれたり、人や物が移動する時に付着して運ばれて生息し続けたりする場合がある。こういった生物を外来種という。外来種の全てが環境に適応できるわけではないが、新たな環境に適応しその地域に生息していた生物を捕食するなど生態系を脅かす存在になることもある。日本では2004年に外来種規制を定めた初の国内法である特定外来生物被害防止法が国会で成立、施工されている[1]。この法律で定められている被害を及ぼしている、または及ぼすおそれがある生物は必要に応じて除去を実施することとされている。除去した生物はその後、ただ捨てられてしまうだけである。
本研究では、この中で植物に注目し、本来であれば除去され捨てられてしまう外来植物、また伐採してゴミになってしまう植物に一手間加え、新たな使い道を創造する。

2.研究の目的

本研究では、生田緑地運用共同事業体および岡本太郎美術館の協力を得て、小学校低学年を対象とした草木染物を用いたクラフトワークショップを行う。植物は主に生田緑地で生息している外来のもの、伐採したものなど生田緑地内で取れるものを使用する。ただ染物をするだけではなく、染物をしたものに樹皮顔料で模様付けを施し、実際に使えるものへと変換する。それらの経験を通して、小学生に外来植物に関する正しい知識、また身の回りにある一見無駄なものは工夫をすれば新たな価値や用途の可能性があるということを知ってもらうことを目的とする。

3.先行事例との関連

外来植物の草木染めは多くの場所で行われている。例えば埼玉県生態系保護協会はオオキンケイギクでハンカチを染色するイベントを行っている[2]。このイベントで子ども達は身近な外来植物の存在、生態系への影響を楽しみながら学ぶことができる。しかし、ハンカチでは小学生が普段使わず仕舞い込んでしまう可能性があると考える。
以上から、ただ外来植物の知識を教えるだけでなく、草木染めを通して実際に手で触れ体験することで子ども達の興味を引け、知識を深めることができる。本研究では、自分たちで染めたものを普段使いできるものにし、何度も体験で学んだことを何度も思い返せるようにする。また、オリジナリティーを出すことで家族や友人達に自慢できるものを制作できるようにする。

4.調査と分析

4.1.調査

道塚小学校(東京都大田区)において、今の小学生が使用するもので染物に向いているものは何か、染物ワークショップの定番であるハンカチは普段使用されているのかについてインタビュー調査を行った。

4.2.分析

その結果、ワークショップで制作したハンカチを活用する児童は少ないことがわかった。染めたものを普段使いしたり、飾ったりしないと新たな使い道とは言えない。そこで、形、素材は様々だがいつでも使っている筆箱に着目した。また、染めたものは洗濯すると退色する可能性がある。筆箱は洗う必要がないため染物に向いていると考えた。

5.成果物

5.1.コンセプト

本研究のコンセプトは「普段捨てしまうものも少しの工夫で新しい使い道の可能性がある。また、それらを親子で学ぶ場を、地域で協働することによってつくる」である。

5.2.概要

岡本太郎美術館、生田緑地運用共同体と連携し、ワークショップ「TAROを彩る」を2回開催する。内容は生田緑地に生息している外来植物や落ちている植物を使ってロールペンケースを染色し、岡本太郎作品を鑑賞してもらう。その後、ペンケースに作品から得たインスピレーションを元に樹脂顔料で作品を表現する。2回目のワークショップでは1回目の反省点を改善し、草木染めと外来植物の知識もつけられるように染めている間にスライドを使用し、レクチャーを行った。
ワークショップ後、活動を一般公開するためのWebサイトを整備した。また、家庭でも草木染めをしやすいように楽しさや流れをまとめた。

6.評価と考察

6.1.評価方法

(1)ワークショップ終了後、参加者の小学生または保護者にアンケートを行い、1回目と2回目を比べ評価する。アンケート内容は外来植物について・草木染めについて・新しい使い道の可能性についての3つである。
(2)岡本太郎美術館スタッフにいただいたワークショップ全体の感想を元に評価する。

6.2.結果と考察

(1)アンケート結果を比べると、外来植物と草木染めの「よくわかった」率が上がり、「わからなかった」率が下がった。しかし、新しい可能性については割合が下がった。2回目で外来植物と草木染めの理解が高まった理由はワークショップ中に行った授業だと考える。新しい使い道の可能性については、スライドが小学生向けに上手く作れなかったため率が下がったのだと思われる。また、参加者の感想では「楽しかった」、「外来種の意味がわかってよかった」との声が挙げられた。
(2)いただいた感想の文をいくつか抜粋する。「今回のワークショップは、岡本太郎と外来植物を掛け合わせ、外来種と岡本太郎についての知識をつけるのと同時に、ペンケースを制作することで知識の活用のバランスがうまくとれていて、新しい価値基準を持つための<きっかけ>を作れたのではないかと思います。」「ペンケースを利用する際に少しでも思い出されればこのワークショップが大成功だったと言えるのではないでしょうか。」
ワークショップの目的とその準備、2回目に改善したところなど高評価をもらった。しかし、このワークショップから今後参加者の考えがどう変わるのかも本研究の重要な部分である。

6.3.今後の課題

(1)スライドの内容を簡単にして小学生向けのものを作る、要点を絞って短めに作る等の改善が必要である。
(2)ワークショップの前後にアンケートを取り、参加者の考え方がどう変わったかを比べれば本研究の本当の評価がつけられると考える。
(3)小学生、主に低学年の草木染めワークショップをするにあたって、保護者も一緒に楽しめるような内容であるとなお良い。今回、保護者は子供達の制作をサポートするだけだったが、保護者も同時に制作してもらうと退屈しないで進められると考える。
(4)ワークショップを企画し運営する中で集客が最も難航した。今回は美術館の広報物やファミリー向けイベントサイトに情報を載せたが、集客をどう行うかは早めに決め、話し合っておく必要がある。

7.おわりに

本研究で自分自身が身の回りで無駄にしてきたものを考えるいい機会になった。このワークショップや研究がどうすれば新しい価値が生まれるか考えるきっかけになっていればいいと思う。成果物を制作するにあたって、岡本太郎美術館をはじめ、生田緑地運用共同体やワークショップスタッフなど多くの人の力を借りた。関わってくれた人たちに大変感謝したい。

8.参考文献

[1] 世界自然保護基金 外来生物問題 https://www.wwf.or.jp/activities/wildlife/cat1016/cat1100/#001
[2] 東京海上日動 特定外来生物オオキンケイギクで草木染め体験http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/greengift/internal_activity/article/event71.html