住民参加型アートプロジェクトにおけるプロモーション施策の多角的検討


Keywords: 参加型アート, 地域活性化, プロモーション

1.はじめに

近年、郊外の町おこし[1]やコミュニケーション促進などをねらいとした参加型アートプロジェクトが広く催されている。作品の制作者と鑑賞者の隔たりを排除して取り組む参加型アートの特性を活かし、上記のような活動を推進するために参加型アートが催されているのである。
しかしこういった参加型アートプロジェクトが乱立されている[2]一方、実際に参加者として関わる人々とそうでない人で、アートに対するイメージに大きく偏りがある。後者にはアートそのものや参加型アートに対する情報が行き届かず、存在や魅力をしっかりと伝えきれていないという問題がある。

2.研究の目的

本研究では、川崎市岡本太郎美術館が主催する参加型アートプロジェクトを題材として、アートにあまり興味・関心のない人がどのようなきっかけで美術館の取り組みを知るか、参加したくなるかのコンテクストについて調査と分析を行い、そのプロモーション施策についての多角的な検討を行う。それらを通して情報過多時代におけるコミュニケーションデザインの効果的な方法を提案することを目的とする。

3.先行事例との関連

人々の興味・関心を促そうと試みる活動は参加型アートに限らず、イベントや奉仕活動などを行う際に必ず考えられ、実行されている。文部科学省ではボランティア活動を推進するために興味・関心の喚起をねらいとしたプロモーションの手法を様々な経路から想定[3]している。ボランティア活動の促進として、趣味・地域・所属団体・家族・メディアの5点からできることを全て洗い出し、より広く情報が伝達されるような様々な取り組みが成されている。情報伝達のターゲットとなる人々に対して、少しでも活動について知ってもらいたいという姿勢が見受けられる。このように多くの経路からプロモーションをすることは人々の広い認知に結びつくのではないかと考える。
一方で、ただ情報を広く知らしめるのみでは効果が見込めないということである。伝えるべき情報は活動をしていることや日程だけでいいのだろうか。本当に伝えるべき情報がしっかりと行き届いているのか。プロモーションを行う際は、情報の発信者と受信者で必ず捉え方にズレがあることをよく理解し、情報のどこが中心となっていてその情報が有益であるかしっかりと調査をする必要がある。

4.成果物

岡本太郎美術館主催の参加型アートプロジェクト「光るTAROをつくろう!」のプロモーションに利用した制作物である。

4.1.ポスター

地域住民の方々が展示用の作品を制作するワークショップの広報ポスター(図1)を配布した。専修大学内、川崎市民館、生田緑地ばら苑など、地域住民が集まりやすい場所で掲示・配布をした。

4.2.動画

ワークショップの様子から作品展示後の風景まで、一連の流れを把握できる広報動画(図2)を制作した。制作した動画はFacebookページで公開し、Facebookの広告機能やシェア機能からリーチしている数や年齢層を把握(図3)した。


5.考察

5.1.参加型アートに対する住民のイメージ

岡本太郎美術館の参加型アートプロジェクトに関わり始めた当初、従来ではあまり見ることのない新しいプロモーション施策を考えていた。しかし実際に参加型アートの現場に立ってわかったことは、斬新なプロモーション施策ではなく参加者の「アート」へのイメージを少しでも変えることのほうが重要である、ということである。
例えば、今回のワークショップにおける作品制作は、特に難しいものではなく作り始めれば誰でも楽しめるような内容である。しかしながら、私の接した住民達が抱いていたイメージは「どこか難しそうで敷居が高い」というものだった。そこで必要なことは、ワークショップの内容を事前に理解することである。敷居の高さを払拭して実際に制作を行い、自分たちの制作した作品が美しく展示される一連の流れを想像することができれば、参加してみようという意欲に繋がるはずであると考えた。
この考えに至り、自分は斬新なプロモーション施策ではなく従来でも行われているような地道な方向性を実行することに切り替えた。ワークショップの様子を伝えることだけならポスターや動画でも可能であると考えた結果である。

5.2.SNSによる認知

今回はFacebookでイベント用のページを制作した後、さらにFacebookの広告設定を変更した。年齢や地域などの設定が可能で、動画広告と合わせてかなり広いリーチを獲得した。通常の投稿が約600リーチ(タイムラインに流れた数)のところ、ターゲットを絞ることにより約3倍の効果が見られた。Facebookのタイムライン上では動画が自動再生になっているため、他の投稿より目立ったプロモーションになると考えた。
また、他の場面でも言えることだがこういったアートプロジェクトへの関心には特に理解者・関係者の発言や拡散が大きく作用する。単純にアート関係者のフォロワーに拡散できるだけでなく、「この人が紹介しているなら楽しいかも」という印象を抱かせる。5.1で述べたようなアートへのイメージ払拭と合わせてのSNS利用は効果的であると考える。

5.3.行ったプロモーション施策に対して

現地調査の他、ポスターと動画(SNS)のプロモーションを行ったが、リーチ数や現場の声を元に評価すると、告知動画の反響がもっとも大きかったといえる。内容がスピーディに伝わりやすく、スマートフォンの普及から開催情報に接触できる機会が増えたことが考えられる。
一方で紙媒体による告知にはかなりの限界を感じた。内容や見た目で試行錯誤したものの、掲示物で他より魅力的であることを伝えることは大変難しいことを痛感した。関心を持たせるために何かしらもっと意表を突いてプロモーションが求められる。
現在のような情報過多時代では細かくターゲティングできるネット上のプロモーションが大変効果的であり、従来の方法であるフライヤーやポスターなどを活用する際は、当初の考え通り何かしらの斬新さが必要である。

6.おわりに

後期活動は実際のイベントに足を運ぶことが多く、現場の声を研究へ取り入れることができた。インターネットを利用したプロモーションは必須ともいえる時代だが、現場でしかわからないこともあると痛感した1年間だった。だが美術館や地域住民の方々の協力もあり、参加型アートという催しの魅力を少しでも伝えることができたことは自分の中でとても大きい経験となった。