ハンドメイドショップにおける信頼感の形成要因

Keywords:ハンドメイド,ブランディング,販売,ショップデザイン

[NE19-1063K/CDプログラム]

1.はじめに

あらゆるものがデジタル化し私たちの生活も急速に変化・効率化されている中、近年では手作りで作られたいわゆるハンドメイド商品に注目が集まっている。ハンドメイド商品は、自分自身で一から構想し手を動かす行為を行うことで初めて生み出せる、世界に二つとない作品を指す。ハンドメイドという手法は、コロナ禍によりリアルのコミュニケーションが乏しくなった分、価値を共有したい欲求は強くなっている[1]という傾向から「自ら生み出す」ことに意味を見出せる点、そして大量生産では感じることができない作り手の「温かみ」や「優しさ」を感じることができる点で、私たちの現在の日常において非常に価値のあるものなのではないだろうか。

ハンドメイドショップは一種のD2C(Direct to Consumer)であり、顧客との関係を直接作っていくことが可能である。しかしながら、どのような要因で顧客との信頼関係が形成されるのかは明らかではない。そこで私は、自らがハンドメイドショップを運営し、顧客とのさまざまなタッチポイントを理解していくことを通して、その信頼関係の形成要因を分析できないだろうかと考えた。

2.研究の目的

本研究は、母と共にハンドメイドショップの運営を通してどのような要素で信頼感が形成されているのかについての調査を行う。その中で得た知見をショップ運営に還元し、ショップを取り巻くサービスのデザインを向上させることを目的とする。

3.ハンドメイドの参考事例

ハンドメイド作家は主にminneやcreemaといったハンドメイドマーケットサービスを利用し、作品の展示や販売を行っている。また、これらのサービスへの導線として、InstagramやTwitterを併用して運営していることが多い。この勢いはインターネット上だけに留まらず、「ハンドメイドマルシェ」「ハンドメイドインジャパンフェス」などの実際のリアルイベントも定期的に開催されている。私たちのショップは2022年の10月に開催された東京ハンドメイドマルシェに出店した。(図1)

図 1 出店時のブース写真

4.調査方法

売り手と買い手2つの方向性から信頼感についてアプローチする。調査方法は、売り手と買い手それぞれ経験が十分にある人物へのインタビューである。生の声を聞くことで、信頼感を形成している要素を見つけ出していった。売り手側は母とハンドメイドマルシェでご縁があったクリエイターさん2名、買い手側は母、友人Yの2人に話を聞くと同時に自分の経験も振り返ることで対応した。

5.結果と考察

5.1.売り手側からの要因

売り手側からの形成要因は、大きく3つに分類することができる。1つ目は客観的な評価である。クリエイターが生み出した‘作品’は、ショップに置かれた瞬間に‘商品’へと変化する、これはハンドメイドショップを運営するにおいて非常に大切な要素であると考える。清潔感のある綺麗な見た目に仕上げる、興味を引くために丁寧なコンセプト設定を心がける、など自分が買い手側になった際に購入したいと感じるショップづくりを行うことが自然と信頼に繋がることが考えられる。2つ目はSNSの適切な活用である。現代ではSNSでの宣伝が主流となっており、SNSで情報収集する人も多い。実際にインタビューさせて頂いたクリエイターさんも、今はInstagramでの宣伝をメインとしているが今後はTikTokも利用することを考えているため同時進行で勉強していると仰っていたことから、流行りに沿ったSNSでショップの宣伝を行うことが重要であると考えられる。また、継続的に投稿を行うこと、いいね・コメントで他者とコミュニケーションを取ることもクリエイター自身への信頼に繋がることが、母の活動から分かっている。(図2)

図 2  実際に運営しているInstagram

3つ目は自身の人柄や態度である。ハンドメイドマルシェで実際に販売を行なってみて驚いた点として、明るく元気で話しやすく、インタビューも快く受けてくれるクリエイターさんばかりだったことが挙げられる。会話の中で、個人的にワークショップを開いたり、定期的にマルシェのような対面のイベントに出店していたりするクリエイターさんが多く見られたことから、コミュニケーションを取ることが好きな人が多くその性格が自然とショップの雰囲気にも繋がっているのではないかと考えられる。また関連してその雰囲気は自身がつくる商品にも影響する。これらの繰り返しがショップ全体の信頼感にも繋がるのだと考える。

5.2.買い手側からの要因

買い手側からの形成要因は、大きく3つに分類することができる。1つ目は売り手側からの要因でもみられた、客観的な評価である。3で述べたハンドメイドマーケットサービスでは、商品を購入した際に任意で評価とレビューをすることができる。これによって、ハンドメイド作家の印象や作品の満足度を客観的に知ることができるため、作品を吟味する判断材料の一つになる。また、Instagramではフォロワー数や投稿に対するいいね数、コメント数から注目度の判断にも繋がる。関連して、自分にとって影響力のある人物によるレビューでも同じことが言える。企業の新商品などでは芸能人やインフルエンサーを起用し宣伝することで注目を集めているが、ハンドメイド品の場合は家族や仲の良い友人など普段から信頼のおける人物からのレビューの方が、影響力が高いと考えられる。人間の温かみが強みのジャンルであるからこそ、ハンドメイドは非常に価値のあるものだと言える。

2つ目は選択した写真の適切さである。写真選択は、制作者や作品の第一印象に直結するといっても過言ではないため、背景に生活感がありすぎたり、写真が暗すぎたりしてしまうと良い印象を与えることが難しくなると考える。3つ目は梱包状態である。郵送・手渡し関係なく、受け取る側のことを考えた心遣いのできる梱包かどうかでリピートの有無にも繋がると考えられる。それに加えてメッセージカードやショップのチラシなどを同封するクリエイターも増えているため、心遣いの方向は無限大である。

これら双方の関係をまとめて図式化すると以下のようになる。(図3)

図 3 信頼感の形成要因

6.今後の課題と展開

初めてブランディングからショップデザインを行なってみて、一から他人の信頼を得ることの難しさをあらためて実感した。今回始めたハンドメイドショップは卒業演習が終了しても変わらず続けていく予定のため、今後はノベルティやチラシデザインなど、母一人では手が回りにくい部分の作業を担当することができたらと考えている。さらに、もしも母がまたマルシェのような対面イベントに出店したいと言った際には、当日までのサポート等も積極的に行なっていきたい。

7.おわりに

卒業演習を始める以前からショップのブランディングを行なってみたいと考えていたがタイミングがなく実行できていなかったため、卒業演習という個人で自由に制作ができるきっかけで一歩を踏み出すことができ、非常に良かったと感じている。また母と共同でショップ運営を行なったことから、普段の何気ない会話から生まれるアイデアの大切さ、貴重さを改めて感じる機会となった。

参考文献

[1]繊研新聞社「おうち時間で注目のハンドメイド」

https://senken.co.jp/posts/home-time-minne-1

(2022年7月15日)