Keywords:スローファッション,コンテンツ,歴史
[NE19-1160A/CDプログラム]
1.はじめに
ファッション・アパレルにおいて『スローファッション』という言葉は未だ日本社会ではあまり使われていない。スローファッションとは、アパレルのデザイン、生産・消費過程、ショッピングの仕方などを含め、地球環境に配慮したサステナブルなファッションの価値観のことである。
私はファッションを安く楽しむことが主流となっているこの世の中で、“安いから買う”ではなく、“コレが良いから買う”というように、これからの大衆の購買意識における洋服への価値観を変えることが必要だと考えた。
モノが大量生産され、売れ続ける限り環境破壊の進行は止まらない。しかし、気候変動が人為的に引き起こされているのならば、個人の行動の範囲では可能なこともあるはずである。筆者は、このモノが売れ続ける流れの抑制を試みたい。
2.研究の目的
本研究では、人間の生活における『衣』への当事者的なこだわりに着目し、スローファッションの価値観を日本に普及させるためのメディアを試作する。
特に〈歴史〉にフォーカスを当て、これまでファッシ ョン・アパレルの流行からどのような服が作られ、その服 の作りや、使われている素材から、あまり服にこだわりがない人にも興味を持ってもらえるコンテンツを提案したいと考えている。
3.先行事例との関連
すでにファッションブロガーやアパレル企業のサイトにて、自社の製品にフォーカスを当てるように服の起源、歴史や製法による特徴などを発信するコンテンツは多く存在する。
例えば、Tシャツの大手メーカーであるUnited AthleではTシャツにまつわる様々な情報を載せている。中でも『Tシャツの歴史|発祥から普及まで』という記事を載せており、非常に詳しくTシャツの歴史がこの記事から知ることができる。
しかし、スローファッションを目的としたその服、アイテムに対しての愛着を促すようなコンテンツ制作はされておらず、ファストファッションの価格以上の価値を見出すような工夫をするのは難しい。大衆の流行やニーズに合わせ、的確な情報発信と発信する側の意図の擦り合わせが必要なのではないかと考える。
4.研究過程
4.1.POLO RALPH LAURENへの取材
黒染めをする服として少し汚れがついているPOLO RALPH LAURENのオックスフォードシャツの古着を購入した。黒染めをする前にこのシャツについて調べようと思い、POLO RALPH LAURENのカスタマーサービスに問い合わせたことをきっかけにPOLO RALPH LAURENの表参道店にて取材をさせてもらった。POLO RALPH LAURENというブランドから各ラインの紹介、定番の商品等の説明をした後、古着として購入したオックスフォードシャツに関しても教えてもらった。
4.2.WIRED CONFERENCE 2022に参加
WIRED CONFERENCE 2022に参加し、鎌田安里紗さん、津川恵理さん、川崎和也さんの『リジェネラティヴな地球の未来のために、いま「ファッション」にできること』というテーマのトークセッションを聞き、ワークショップでは川崎和也さんが担当する『循環型ファッションのためのプロトタイピングガイド』を体験した。
図 1 ワークショップでの発表アイディア
ワークショップではリジェネラティブなアイデアをアパレル・ファッション業界のビジネスに落とし込むことを目的として、4人組で行った。私たちのグループは衣類を回収し、デジタルコレクションとして保存するサービスを提案した。
5.成果物
5.1.ウェブサイト『Not New – ノット ニュー -』
図2 ウェブサイトTOPページの看板
スローファッションを推進していくことを目的としたwebサイト『Not New – ノット ニュー -』を開設した。洋服にまつわる歴史、起源についての記事やサスティナブル、スローファッションに関連したニュースや本のレビュー等の記事を投稿しているメディアである。
記事の内容として、服の起源や歴史を中心として投稿している。投稿した記事の一覧はこの通りである。
・オックスフォードシャツ 徹底解剖
・ファッションと私達 Topic by『SHEIN』
・不可能はないと感じる『サステナブル・ファッション』読んでみて
・ニット 徹底解剖
・軍パン スノーカモ 徹底解剖
・デニム・ジーンズ 徹底解剖 vol.1
初めはオックスフォードシャツについての記事を投稿し、その後も季節や私自身の気になるアイテムに合わせて記事を書いている。11月下旬頃にsheinの労働問題がニュースになっていたことから、私のサイトでも発信するべきジャンルだと思った為、取り上げてまとめた。
これまで投稿してきた記事で、周りの知人、友人、卒業演習の展示会に来てくれた方々が特に興味を持って見てくれたのが『shein』の記事だ。やはり、世間の話題に挙がったニュースを取り上げることで、興味を引き、見てくれる人が多くなることに気づきた。この気づきを活かし、こういった社会全般に名が知れているファッション業界のニュースにもアンテナを貼っていこうと思った。
卒演が終わった後もスローファッションに関心を持つ人が増えるように活動は継続していく。
6.今後の課題
今後の課題はまず、より多くの人に記事を見てもらうことだ。やはり誰にも見られないとメディアは存在する意味がない。見てもらうためには、SNSを利用した広報活動を今より積極的に行なっていく必要がある。
そして、記事の数を増やし、より多くの情報を発信していくべきだと考えている。全ての服の起源や歴史がわかる情報源になることを目標にこれからも投稿していきたい。
最後は、本研究の目的でもある通り、服に拘りがない人にも興味を持ってもらえるようにすることだ。服の起源や歴史だけでなく、他にもスローファッションへの意欲を上げるようなコンテンツ制作にも挑戦していくべきだと考えている。また、このメディアを制作してからは、私自身の服への関心はより深いものとなった。一方で、他者から記事を見た時に関心を深められるかどうかについては、まだ内容が浅く、興味を引くものとしては不十分であると考える。その為、今後は服の新たな一面を捉えられるような視点を探し、見る人が明日はこの服を着ようと思わせるような記事を書いていくことが目標である。
7.おわりに
今回の卒業演習では、1年を通して、今後活動していく上でブレないような芯を作ることはできた。しかし、誰かに服への拘りを持たせられたか、広く影響を与えるようなメディアを発信できたかなどは全く達成されていない。今後の課題にもある通り、改善すべき課題が残ったままである。
私は、この活動がちゃんと意義のあるものであったことを証明するために、卒業してからも継続していきたい。
8.文献,その他
[1] WIRED CONFERENCE 2022
https://wired.jp/branded/futures-realities-2022/
[2] United Athle Tシャツの歴史|発祥から普及まで
https://www.united-athle.jp/ua/column/tshirt_history01/
[1] NOT NEW

