For Students: About KMHR LAB.

1|上平研究室とは

主としてコミュニケーションデザイン,エクスペリエンスデザインのスキルと考え方を用いて,デザインの力を社会に活かし,変えていくことにチャレンジしています.現代社会を広く見渡してみれば,まだまだデザインされていない未開拓な領域がたくさん存在しています.多くの人々がデザインを必要としています.教育機関だからこそ可能となる自由なアクティビティを意識しながら,大学,企業,自治体などのネットワークを活かして複雑な問題に対する解を学生達と一緒に考えています.

テーマとなるフィールドは実にさまざまですが,上平が外部から依頼を受けて学生と一緒にとりくんでいるもの(クライアントは企業など)と,上平の個人研究を学生に一部委託して一緒に取り組んでいるもの,学生が自分で関心を持ち,提案するものに大別されます.どれを選ぶか,個人で取り組むかチームで取り組むかは,それぞれの学生と時間をかけて相談して決めています.いずれもそれぞれ実際の利用者と利用文脈をよく見てアイデアを発想し,成果物を作り,実際に評価して考察する,という基本的なデザインプロセスで見れば,年間を通した活動はそれほど違いはありません.

CDプログラムの学習内容と密接な関係がありますが,デザインの専門家になるわけではなくても,自分の思想や活動を実社会のフィールドに活かすための武器として,“考え方としてのデザイン”を指導していますので,どのプログラムの学習内容でも関連しています.

 

2|特色

1)学校を越えたコミュニティ

日本デザイン学会,Xデザインフォーラム,人間中心設計推進機構などの専門家コミュニティや,他大学のデザイン系研究室との連携を活かして,より有意義なディスカッションの機会をつくっています.ここ数年は北海道で他大学と合同で研究室合宿やイベント開催などを行ってきました.

2)豊富なOBやさまざまな企業の協力

社会人の方々は,研究室の学生が専門的知見を要請すればアドバイスをくれたりします.上平研OBはいつのまにか100人を越えました.必要に応じてセッティングしています.

3)プレイフルな学習環境

できるだけ楽しい一年を過ごせるように,ゼミ運営の方法と課外のレクリエーションをみんなで一緒に考えています.お互い有意義な時間になるように,教員との個別ディスカッションと学生同士のグループディスカッションを分けるようにしています.

 

3|これまでのテーマ例

卒業演習作品集

学生成果一覧は,別ページに(http://works.kmhr-lab.com/)にまとめてあります.上のメニューから年度を選んでください。2013年度までは冊子を作っていましたが、2014以降はここにまとまっています。2015年度は上平が在外研究で抜けていますが、過去4年分が掲載されています。

主な領域は、

1)社会的な問題やマイノリティの問題にアクセスし、創造的問題解決を行う領域

NPO/地方自治体や、障がい者問題、地域の生産者など、デザインしたくてもなかなかリソースがない人々が主体的に活動することに取り組むためのデザイン活動を行っています。

2)主にコミュニケーションに関わるデザインを研究する領域

インフォグラフィックス や学習教材、おもちゃなどの主として人と人が情報をやりとりするために道具作りに取り組んでいます。

3)大学の学習環境や,デザインに関する学びを研究する領域

子ども向け、中高校生向けのデザイン・ワークショップや体験授業等での実践や、大学の学習環境などの場で活用できる教材などを開発しています。

4)まだ未開拓な領域

オントロジカルデザイン、非人間との協働、デザイン人類学などまだメジャーではないけれどもこれから重要になってくる領域について研究しています。

 

4|学生へのメッセージ

卒業制作とは,学生にとって,二つの意味でオセロのようなものです.

オセロでは,ある時,パタパタパタと裏返りながら大幅に局面がかわっていくことがありますが,そのためには,布石となるコマが重要です.学生による提案は,プレスリリースされるわけでもなく,小さな発表の場にすぎないかもしれませんが,それでも世界を先取りする先駆的な視点がしばしば含まれています.なんとなくみんなが思っていることでも,動きの悪い大人よりも先にやってしまうことで,後になって大きな意味を持つことも多いのです.

例えばロンドンのある大学(院)の学生作品に,Marble Answer Machine(1992)というものがあります.当時主流だった留守番電話を分かりやすくするというデザイン提案でしたが,プロトタイプだけで実装されたわけではありません.ですが,その画期的なアイデアは,ある研究者をひらめかせ,マサチューセッツ工科大のタンジブルメディアグループという有名な研究グループになり,世界中に影響を与え続けています.その出発点となる有名な論文にも先行事例としてちゃんとクレジットされています.学生はしばしば実装できるかどうかで全ての結果を判断しがちですが,実装だけが全てではないことは知っておいた方がよいと思います.学生ですのでマイナスが沢山あるのは当たり前です,たとえ荒削りなものであっても,コンセプトにおいては先に提示したという事実は残るものです.

もう一点は,自分の履歴としての意味です.自分の人生経験を譜面に置き換えて考えてみましょう.卒業演習は、小/中/高/大と学んできたそれまでの経験を活かして,自分で問いを設定し,それに解を出す,というたったそれだけのことに過ぎません.集大成なんかではなく、むしろ自分の問題意識の持ち方に対するスタート地点です.苦しみながら生み出した解は,意外とあとの人生で繋がってくるものです.実際に,新卒の時ではなく数年経ってから,卒業演習でやったことと仕事が繋がった先輩は沢山います.今はよくわからなくて無我夢中で置いた一手であっても,それが孤立しているコマであっても,いつかきっと「これがあったから繋がったんだ」と気付く時が来ると思います.

一年をかけて問うことは本当に得難いもので、卒業研究に没頭した頃の気持ちや志を同じくする仲間(他大学含む)との議論は、一生忘れない貴重なものだと思います.何かに挑戦しようとしている学生への支援は惜しみません.

 

上平 崇仁